265 あおうみがめ退治

『捜神記』

斉の景公が揚子江、沅水のあたりを舟で渡ったとき、あおうみがめが現われて、馬車を曳く左側の馬をくわえて水中に引きこんでしまった。一同がうろたえていると、古冶子が剣を抜いてあおうみがめを追った。斜めに三十町ほど追ったかと思うと、また二十町ほどもどる。とうとう砥柱山のあたりで追いつき殺してみると、やはりあおうみがめであった。そこで左手にその首を持ち、右手でくわえられていた馬を引き抜くと、ものすごい勢いで水面におどり出た。そして天を仰いで大きく息を吐くと、川の流れも三百歩あまり逆流した。見物していた人たちは、みな彼を河伯かと思ったのであった。

訳:竹田晃『捜神記』(平凡社ライブラリー)より原文


『捜神記』より
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