238 二匹の赤い蛇

『捜神記』

車騎将軍の巴郡(四川省)出身の馮緄(ふうこん)、字は鴻卿が、議郎をつとめていたとき、官印をしまっておいた箱をあけると、長さ二尺ほどの赤い蛇が二匹いて、南北に分かれて逃げ去った。緄はおそろしい前兆だと不安になった。

そのころ、許季山の孫の憲、字は寧方が、祖父の秘伝を受け継いでいたので、緄は頼んで占ってもらった。憲の見立てによると、
「これは吉兆です。あなたは三年後には辺境遠征車の指揮官となるでしょう。場所はここから東北方四、五里、官名には東という文字がつくでしょう」
それから五年後に、緄は大将軍の部下として南方に出征し、ほどなく尚書郎、遼東太守、南征将軍に、つぎつぎと任命されたのであった。

訳:竹田晃『捜神記』(平凡社ライブラリー)より原文


『捜神記』より
『捜神記』より参照される話の一覧。