063 妖蛇のたたり

『捜神記』

揚州(安徽省)の別駕顧球の姉は、十歳のとき病気にかかったきり、五十すぎになっても、いっこう治らなかった。そこで郭璞に占わせたところが、「大過より升にゆく」という卦が立った。書物の解説には、
「大過の卦はその義よからず。墳墓の枯楊に花咲かず、遊魂をゆり動かして竜車あらわる。身に重き災いをこうむり、妖邪の害を受くるは、樹を斬りて霊蛇を殺せしによる。これ己れの咎にあらずして先人の罪なり、しからば卦を案じてこれを論ずるもせんかたなし」
とあった。そこで球が、今までわが家に起こった事件を調べてみると、つぎのようなことがわかた。

先代があるとき大木を切ったところ、大きな蛇が出て来たので、殺してしまった。すると娘が病気になったのである。発病後、数千羽の鳥の大群が屋根の上を飛びまわった。人びとはふしぎがったが、どういうわけかわからない。また、県内に住むある百姓が、この家のあたりを通りかかったとき、ふと空を仰ぐと、竜が車を引いて行くのが見える。きらきらと五色に輝き、とほうもなく大きかったが、やがて消えてしまったという。

訳:竹田晃『捜神記』(平凡社ライブラリー)より原文


『捜神記』より
『捜神記』より参照される話の一覧。