042 扶南王

『捜神記』

扶南王の范尋は、山の中に虎を飼っていて、罪を犯した者があると虎に投げあたえ、虎が食わなければ、ゆるすことにしていた。そこで、この山は大虫とも大霊とも呼ばれる。

また、尋は鰐を十匹飼っていて、罪を犯した者があると鰐に投げあたえ、鰐が食わなければ、ゆるすことにしていた。罪を犯していない者は、誰も食われないのである。このために鰐の池をこしらえておいたのだ。

また尋は、水を沸騰させ、金の指輪を湯の中に投げこんでおいてから、容疑者に手を入れて探させたこともある。すると、無実の者の手はただれず、罪を犯した者は、手を入れたとたんにやけどを負った。

※大虫 虎のことを大虫とも呼ぶ。

訳:竹田晃『捜神記』(平凡社ライブラリー)より原文


『捜神記』より
『捜神記』より参照される話の一覧。