『捜神記』
陶安公は六安(安徽省)の鍛冶屋である。毎日火を使っていたのだが、ある朝、火の粉がさっと舞い上がり、紫色の炎が天までとどいた。陶安公がふいごの下につっ伏して助けを求めると、まもなく赤い雀がふいごの上にとまって声をかけた。
「安公よ、安公よ。お前の鍛冶は天までとどいたぞ。七月七日、お前を迎えに赤竜をよこすであろう」 約束の日になると、果して赤竜が迎えに来たので、安公はそれに乗り、東南へと去った。町の人びと数万人は、あらかじめ安公を送る会をもよおし、残らず別れを惜しんだ。
訳:竹田晃『捜神記』(平凡社ライブラリー)より原文