神武王の化龍滅敵

崔仁鶴『朝鮮伝説集』原文

新羅の末期の神武王時代、大王の最大の悩みは東海から攻めてくる倭の海賊であった。彼らは長鬐岬と竹辺岬の間にある十二個の島を根拠にして、たびたび村を襲ってきては、殺人、放火、略奪、強姦、さらに婦女子をさらって行ったりした。大王は在位およそ一年ほどの間、これら倭賊の侵入を防ぐために活躍したが、重病にかかって死にそうになった。そこで遺言を残した。「倭賊を全滅させずに死ぬのはとても口惜しい。死んで昇天し、龍になって必ず倭の根拠地十二の島をなくす」というのであった。

大王が死んだ後、ある日の晩、いきなり颱風が吹き、海は波浪で乱れ、雷と稲妻が発生した。そして黒い雲の中から龍が現われ、尾で十二個の島を叩き、海の底に沈没させた。したがって倭賊も全滅してしまった。

その後、人々は、神武大王の霊魂が龍になったという。

『日月郷誌』参照

崔仁鶴(チェ・インハク)『朝鮮伝説集』(日本放送出版協会)より