伝説 蛇岩

『豊浦町史 三 民俗編』原文

むかし、むかし、磯上の辻に大きな蛇が皿をもうた形をした岩がありました。

どう見ても本当の蛇そっくりでした。なかには、あれは本当の蛇が、じっと休んでいるのだ。夜になると、はい出すそうな、というひともいて、みんなおそれて夕方になると、その道を通る者は一人もいなくなりました。

湧田のある正直者が、そんな話は気にもとめず、昼、そこを通り、評判の岩を見ると気のせいか信玄袋に見えた。近づいてみると、やっぱり信玄袋だったので、かたに背負って持ち帰りました。家で開いてみると驚きました。中には、お金や珍しい物がいっぱい入っていました。さっそく地下役人に見せて、役所に届けました。役所でも、いろいろせん議してみましたが、置き主はとうとうわからず、そのまま正直者にその袋は下されました。正直者は、そのお金を地下に寄附して湧田の開発のために使って貰い、自分も残った金で安楽に暮らすことができたという話です。

『豊浦町史 三 民俗編』より