おとせと大蛇(盆踊り唄)

『黒部市史 歴史民俗編』原文

ころは三月十八日よ
明日お寺に開帳がござる
開帳ありゃまた参らにゃならぬ
開帳戻りの愛本橋で
紙に包んだ手拭拾うた
拾うた手拭のちらしを見れば
愛と恋との大蛇のちらし
おとせ(お竹)喜び袂にしまい
家に帰ってふた親さまに
見せて二、三日たたないうちに
若い男が旅装束で
ぶらりぶらりと荻生の村へ
ここはどこよと子ども衆に聞けば
ここは荻生の中村でござる
荻生中村の徳左衛門さはどこじゃ
もうちょっとゆかんせ徳左衛門さがござる
夜のこととて大門しまる
大門しまれば小門もしまる
大蛇巧者で裏門まわる
おとせおとせと二声三声
おとせびっくりしてはや目をさます
夜の夜中にわし呼ぶものは
狐狸の迷いじゃないか
手拭落した大蛇でござる
大蛇様かえやれ恐ろしや
拾うた手拭お返しします
手拭ほしさに来たのじゃないが
雨が降ってもぬれない手拭
風が吹いてもたたない手拭
それをお前が拾うたじゃないか
いくら深ても二丈か三丈
さあさあゆかんか愛本橋へ
されど皆さん道中は長いぞ

『黒部市史 歴史民俗編』より


おとせと大蛇
富山県黒部市荻生:手拭を拾ったおとせのもとへ蛇聟が来る。盆踊り唄となっている。