伊豆諸島の大蛇伝説(二)

東京都三宅村坪田

昔、八丈島に大蛇の首が、新島にその胴が、三宅島にその尾が飛んで来て落ちた。その時島にはサシド明神とホドリ明神がいた。大蛇の尾に驚き、ホドリ明神が急いで剣を打ち、その剣でサシド明神が尾をずだずだに斬り裂いた。それ以来三宅島には蛇が棲まない。

また、頭の行った八丈島には頭の大きな蝮が居り、胴の行った新島には青大将が多い。尾の来た三宅島には尾の長い蜥蜴が沢山住むようになった。(藤木喜久麿「伊豆七島の伝説(一)」)

『旅と伝説』11号より要約


三宅島には別に、大蛇を退治する長い話が伝わっている。伊豆三嶋大明神の縁起、通称『三宅記』に語られる話にほぼ同じものだ。

伊豆諸島の大蛇伝説(一)
東京都三宅村:箱根の湖の大蛇が、娘を追って三宅島に渡り、三嶋大明神とその一族に討伐される。

三宅島の坪田にはこのような大蛇伝説が語り伝えられたという。いきなり「どこからともなく」大蛇の尾が落ちて来るということで、大蛇討伐の話はないようだ。このような点から『三宅記』の話が広まったのか、島々にもとからあった話が『三宅記』にまとまったのか判断できない、ということになってくる。

ともかく、「島の昔話」としてはサシド(差出)明神とホドリ(火戸寄)明神が重要なようで、セットで語られる(『三宅記』には見ないモチーフ)。大蛇のパーツの行き先も胴・尾は色々なパタンがあるが、頭が八丈島で蝮が多いというのはわりと固定しているようだ。