蛇口神

『坂戸市史 民俗史料編 I 』原文

蛇口神さま 入西
昔、戸口の西前河原は広い沼地で大きな杉や雑木が生い茂り昼でも暗いところであった。ある日、村の若者が草刈りにいったところが夜になってもかえらない、そこで村のものが心配して沼地へ捜しに行ったところ、大蛇がとぐろをまいていた、若ものはすでに大蛇にのまれたあとだった、村のものはおどろき古老たちとも相談して二度と大蛇の被害にあわないようにと蛇口神(じゃこうじん)さまを祀った。その後、ジャクシンさまとかジャコウさまとも呼ばれ以前は縁日もあった。今は蛇口神さまといわれ東入西神社に祀ってある。(話者・戸口 三田政之)

蛇口神 入西
戸口では、今から約百五十年位前に当字名主三田様方で作男が朝、草刈に今の西前河原へ行って帰らないので村人たちがさがしたところ、大蛇が出て来たので、この大蛇に呑まれたにちがいないと、今後又こうゆうことがあっては困るというので村中相談してその大蛇を祭りこもうと一決して祭ったのがこの神社である。その西前河原は昔一面の湿原にて深いところ二メートルくらいはありました。それから、御神体は両足に蛇がまきついて両手から首までまきつかれ、唐獅子の上に立っております。なお、外の一体は蛇がからだにまきついて肩のところで首を出して大きな口をあいています。これは、おそらく雌雄の二頭だと思います。そして日照りが続いて田の用水がなくなり畑の作物が枯れるようになると、当字の三田安五郎さんが三谷地先の深い川で呪文をとなえ、まわりから若者、子供が一斉に水をかけると北西の空が曇り出し大雷雨となって皆逃げ帰ると、村で早速字長がおしめり正月のふれを出してお祝いをしたものです。(坂戸町高齢者学級編『坂戸の民話と伝説』戸口 加藤俊平)

『坂戸市史 民俗史料編 I 』より