『戸田市史 民俗編』原文
野火止の手前に、水子村といわれる村がある。
昔、弘法大師が修行に来た。ある家にたくはつに行ったところ、そこの家の娘が顔を見たとたんに、「こういう坊さんとなら、一緒になってみたい」と思った。そのように思ったときから、その娘のおなかがふくれてしまった。
それから、三年たって、弘法大師がまた修行に出かけてみると、娘の親が「娘に手を出した」と、たいへん怒っていた。「私はそういうことはしたことがない」ということで、論議になった。いつまでもらちがあかないので、試験してみることになった。そこで、水を入れたたらいの中へその子を入れて、弘法大師が金剛づえで四、五回グルグル回してみると、その子の形がなくなってしまった。その子は弘法大師の子ではないことがわかった。
それから、その村は水子村と呼ばれるようになったという。(新曽)
『戸田市史 民俗編』より