平賀北沢の惣左衛門が、草刈りに行っての帰りに、馬の荷がかしがったので、手頃の石をつけて帰った。その石を庭に置くと、だんだん大きくなるのだった。ある日、蝮に咬まれた人が庭に入ると、不思議に痛みがなくなった。
そこでこの石を神様として屋敷に祀ったが、以来惣左衛門がまじなうと、蝮に咬まれた痛みが治るようになり、世間の人は蝮惣左衛門と呼んだ。
これも蝮に咬まれたのに験があるという蛇石を祀る山田神社(「山田神社の蛇石さん」)の鎮座される常和の北西隣が平賀で、おそらく歩いても半刻もかからない範囲の話と思われる。常和の北の北沢(川)のことならば、本当に目と鼻の先の話だ。
山田神社の蛇石も、拾ってきたのが大きくなっていったと語るところがあり、ほとんど同じような話で、蝮惣左衛門のほうは石より人に焦点が移ったものともいえる。しかし、互いに意識しないでこの話があったとも思われず、どういう関係があるとされていたのか興味深い。