大沢本郷から新田への途中、居川の北側に十二ヶ滝という所がある。ここに弁天様が祀られているが、その裏に径一間ばかりの岩穴がある。岩穴に入ると弁天様が機を織る音が聞こえると言われるが、穴にはいると足を病むともいわれている。
大沢新田となるようだが、もう滝はないらしい。そうなると話の弁天さんがあるのかどうかもわからない。ただ、湧水の多い所であるのは変わりなく、また伝説もいろいろあり、十二ヶ滝はまた酒泉であったなどともいう。
機織り淵、穴、岩などの話はいろいろにあるが、中に、このように関わると足を病んでしまうと語る例がままある。弁天そのものが足を悪くするということは直接はないので、機織りか竜蛇に由来してそうなるのだろう。
それがいざり機のイメージによるものか、あるいは竜蛇にまつわる跛行の話なのか(そもそもそれらが同一なのか)、にわかにその理由は決定できないが、そういった事例の一つに数えられる話だ。
北関東の方には弁天とそれを追った片足の道祖神の話が広く語られるが(「弁天様と道祖神」など)、その話型との関係も考えられる。