鵜川と久米川の合流点の淵を出会い淵という。ここには「布巻き蛇」という主がいると伝えられた。この蛇は美しい布に化けて旅人を誘い、近づくと蛇となって逃げる間もなく巻いてしまうのだった。幾人かの人たちが命を失ったという。
ある時、近くを通った侍が話を聞いて退治した。向こうに見える赤い布を弓で射とめてみると、途方もない大蛇であったという。それからは何事もなくなったそうな。
久米川というのが分らないのだが、芋川を遡ると久米という集落があり、芋川のことだとするならば、古町の堰のあるあたりだろうか。
水辺の布が人を引く話というのはままあるが、その正体が蛇であるのかどうなのか微妙なものが多い中にあって、これははっきりしている事例であり、布巻き蛇と名まである。今は、そのはっきり蛇としている話として参照するために引いた。
越後という範囲では、山古志は小松倉の男池の大蛇が、また布と化けて娘を引き込んだという話もある(「小松倉の男池の主」)。これは並べて見られたい。