小曾木の聞修院の前の木橋には、大きな青大将が二匹住みついていた。
天気のいい日には、二匹のヘビは長ながと橋の上で日なたぼっこをしていた。
お寺に用事があるひとは、
「おヘビさま、ちょっくら通してくだせえよ。」
と、声をかけるとヘビはするするといなくなるのだった。
ときどき、押売りやこそどろが通りかかった。
「おヘビさま、ちょっくら……。」
ということばを知らない押売りやこそどろが、橋を渡ろうとしてもヘビは動かない。
通るに通れず、すごすご逃げだしたということである。
聞修院は黒沢にあり、山号も黒澤山という曹洞宗のお寺。橋といってももう敷地内の小さな橋だが、このように蛇が二匹で守っていたという話がある。二匹の蛇の門番橋番というのはいかにもたくさんありそうな話だけれど、実際はそうはない。珍しい事例、といってもいい。土地柄からいえばアラハバキの神のイメージはないものか、と思いたくなる。
蛇たちが何故に聞修院の橋を守るようになったのかというのは分からないのだけれど、このお寺は竜神の子・化身が開山であったという同青梅市根ヶ布の天寧寺(「天寧寺の由来」)三世霊隠宗源の開山となっている。あるいは竜蛇つながりの話なのかもしれない。