昔、滝川の近くにはたくさん蛇がいた。昔の人たちは、その蛇が蛇玉(たくさんの蛇が集まって玉のようになっているもの)を見ると、金運が良くなると言っていた。ある土用のむす(暑い)日、村の娘が野良仕事から帰る途中で、竹藪の中にその蛇玉を見た。
スットンスットンと麺を打つような音がするので何かと思って竹藪を覗くと、一尺もある玉がぶゆぶゆ動いている。ようくみると、それが蛇の玉だった。生来蛇嫌いのその娘は近くの畑にいるおっちゃんのところへ飛んで行って知らせた。
俺もひと目見てえ、というおっちゃんが竹藪に走ったが、娘にその場所を聞いてよく探しても、もう蛇玉は逃げてしまってなかった。おっちゃんは蛇玉を見れば金運が良くなったのに、と残念がった。