潮来の弁天様

茨城県潮来市

園部氏が潮来に来た時、氏神として安芸厳島の弁天を祀ったのだという。潮来土木事務所の北の弁天山は弁天台地ともいい、今も小さな弁天の祠がある。弁天さんは白蛇に乗って世界を廻られるというが、潮来弁天でも二尺くらいの白蛇が見られたという。

また、戦前には二斗ある男がめ・女がめをはじめ、二十個ほどのかめが奉納されていた。現在は堂の中に数個、外に数個あるにすぎないが、蛇の棲みかだといい、願いが叶ったらかめを奉納する習わしだったという。特に江戸時代から花街の女郎や芸妓たちに信仰され、かめが奉納された。

水郷民俗研究会『潮来の昔話と伝説』より要約

稲荷山公園から、国道を挟んで北にある丘に、現在も潮来弁天さんのお堂はある(祠というには大きい)。行方の丘陵の最南端だ。「かめ」がどのようであるのかは不明。

全国各地の弁天さんに甕を奉納する風がままあった、というならそれほどのこともないのだが、そんなことはない。とするならば、常陸古来の甕への信仰がここに受け継がれていた、と見ることもできるだろう。またそれが台地の辺縁だというところも印象的だ。