延田の大蛇

福島県伊達市

百四、五十年ほど前、細布の留太郎という人が延田の山に藤草を取りに行ったが、その日に限って良い藤づるが見つからなかった。それでどんどん山奥に入っていくと、かすかな音が聞こえてきた。

何かと思うと、大きな木の根のところで大蛇がいびきをかいて眠っているのだった。留太郎は驚き震える足で逃げ帰ったが、七日七晩眠り続けたという。後に、この大蛇は御代田の五幸山のほうへ去ったというが、五幸山の山火事でどうなったのか心配された。

昔から五幸山では大蛇を殺してはいけないといい、蛇を祀った祠がたくさん残っている。

webサイト「ふくしま教育情報データベース」
月舘町教育委員会『月舘町伝承民話集』より要約

五幸山とは今は御幸山(ごこうざん)と書く山だと思われるが、延田からは広瀬川を越えて北西三キロほどのところとなる。そういう大蛇がいた、というほどの話ではあるが、目を引くのは御幸山のほうには「蛇を祀った祠がたくさん残っている」とあるところだ。