湖底に沈んだ四十八ヶ村

福島県郡山市

大同元年に磐梯山が大爆発し、麓の四十八ヶ村は一夜にして生じた湖の底となった。今でも、晴れた日に湖を舟で渡ると、湖底に神木の株や鳥居が見えるという。裏付ける名主名の古文書なども湖北長坂村や湖南横沢にあり、磐梯町本寺の恵日寺縁起にも「大同元年磐梯山爆発し、一夜にして麓が湖となり溺死する者数知れず」とある。

猪苗代湖の成因を磐梯山の爆発によるとするのは、地質学上は許されない話だが、沿岸住民は一千年来そう語り継いできた。伝説の世界にはそれなりの心意現象があり、受け継がれるふるさと意識があるのだ。地質学では否定している。それでも湖底には四十八ヶ村が沈んでいる。

郡山市教育委員会『郡山の伝説』より要約

伝説としては、弘法大師伝説となっており、水を所望した大師に無下にした機織り娘がいたので、翌日磐梯山が噴火したのだとなり、水を施した貧しい翁という名の老女の家だけが島になって残った、それが翁島だ、という話となる。

祖霊の眠る湖底ゆえに竜宮があるのだ。あるいは、一方の土地の由来を語る湖水伝説と比べてみるのが面白いのかもしれない。さいわい、中通りに入って北に行けば、信夫山膝下に信達湖水伝説の地がある。