熊野神社

索部:相模神社ノオト:2011.06.08

祭 神:熊野速玉神
    大己貴神
創 建:不詳
例祭日:九月九日
社 殿:神明造/北東
住 所:足柄下郡箱根町湯本

『神奈川県神社誌』神奈川県神社庁

熊野神社
熊野神社
フリー:画像使用W840

箱根権現の麓となる箱根湯本の地の温泉も千年以上昔から知られていたといわれ、その最初の湯が見つかった所が湯本の湯坂山、すなわちこの湯本熊野神社がそうなのだと社頭由緒(ほとんど摩耗して読めない)にある。江戸時代『七湯の枝折(しおり)』に熊野を「ゆや」と読み、「ゆや(湯谷)権現」として温泉の守護神として祀ったのだろうとある、という話を熊野の神が勧請された理由としてあげている。ちなみに箱根最古の源泉「惣湯」のことであり、これは今でもあるそうな。

『神社誌』にも「古老曰く」で湯場(小字名)温泉発見の際に守護神として勧請された、とあるので、いずれにせよ箱根湯本温泉そのものの歴史とともにあった神社であることは間違いないだろう。

境内社(神輿殿?)
境内社(神輿殿?)
フリー:画像使用W840

写真右が境内社なのかなんなのかは分からない。
『神社誌』には境内社の記述はない。

しかし、昭和五年の逗相大地震で湯坂山腹が崩壊し、社殿その他一切埋没の憂き目にあったそうで、『相模風土記稿』に神像であったと記録される十一面観音の像などは今に伝わらない。

また、神社に続く道脇には連歌師宗祇の終焉の地がここであったという掲示があった(文亀二年没)。宗祇が死の直前に弟子の素純へ「古今伝授」を伝えた地なのだとある。湯本には早雲寺という名刹があるが、そこには宗祇の句碑と供養塔があるそうな。

参拝記

熊野神社へは平成二十二年の六月二十日に参拝している。箱根湯本周辺を回った最初。小田急−箱根登山線箱根湯本駅から早川を渡り、もっとも温泉街らしい町並みを抜けると熊野神社が鎮座している。

先に述べた「熊野・ゆや」の由来は能の「熊野(ゆや)」にあるのだろうか。これ以外に古く熊野をゆやと読む話は今の所見ない。本地の紀伊熊野も小栗判官伝説の湯の峰つぼ湯の地故に「温泉・熊野」というセットは古くから多かったのだろう。

熊野神社の社殿
熊野神社の社殿
フリー:画像使用W840

しかし、一方で御祭神に「大己貴神」とあるのも気になる。『伊予国風土記(逸文)』に見る少彦名命が温泉で蘇生する話にちなんで「大己貴命・少彦名命」が温泉の神格となることは非常に多い。この近くでは熱海の湯前神社がそうである。湯本熊野神社は特に他の神社を合祀したという記録もないが、「大己貴神」はどこから来たのだろう。

箱根・伊豆山の権現勢力との関係としてはそちらの線の方が(つまり湯本の守護神が「大己貴命・少彦名命」である方が)おさまりが良いのだが。

八咫烏の幟
八咫烏の幟
フリー:画像使用W840

熊野といえば。
もっとも八咫烏が三本足の烏だというのは俗説である。

実は私は箱根権現の修験と熊野がどう関係するのかよく分かっていない。しかし、ここ湯本に加えて隣りの塔ノ沢、箱根宮の下でも温泉守護として熊野神社を祀っている。

熊野神社(足柄下郡箱根町湯本) 2011.06.08

相模神社ノオト: