愛宕神社
索部:相模神社ノオト:2011.06.11
JR大磯駅の駅前南側は丘陵に遮られており、いきなり海へ向って下ってはいない。その丘陵地にはかつて三菱財閥の二代目社長の岩崎弥之助の建てた別荘があった(現・エリザベスサンダースホーム)。この愛宕神社はもともとその岩崎邸の最高地点に鎮座していたのだが、駅前切り通しの掘削に伴い現社地に遷座したそうな。
岩崎邸別荘の屋敷神だったかというとそうでもなく、もともとその丘陵の最高地点に祀られていたようだ。すなわち、大磯宿の火防の神として近世東海道を見守って来たのだろう。江戸期の祭典の記録もいくつかあると言う(『神社誌』)。
今はあまり人目につくとは言えないひっそりとした塚の上に鎮座される。大磯駅周辺(大磯宿)にはもう一社、駅から国道一号線に出た所に秋葉神社があるが、どちらかといえばこの愛宕さんの方が大磯宿の火防の神社の本命だったようだ。
参拝記
愛宕神社へは平成二十二年の五月十一日に参拝している。雨の中の大磯神社巡りだった。もっとも大磯の道祖神さんを回る目的だったので神社巡りというのでもなかったが。
大磯は海からすぐ丘陵となり、下写真のような切り通しを設けて海岸部と内陸部を繋げている。しかしそれも近現代の事で、それ以前は速やかな移動の難しい土地だっただろう。また、大きな川がなく、地下水も豊富ということはない。いったん大火が出ると手が付けられなかったという。現在の長者町のあたりにも大火によって灰燼に帰した町の移動の模様を語る碑があった。
つまり大磯宿を見守る丘陵最高峰に愛宕さんが祀られていたというのもうなづける、切実な事情があったのだ、ということだ。今は場所も移り、ここになんでこの小さなお宮があるのか知る人も減っているだろう。でも、そのような大きな役割を持って祀られてきた愛宕さんなのである。
ところで写真のように雨中の参拝・撮影だったのだけれど、「雨中の神社」の雰囲気の良さというのをここでよく実感した記憶がある。緑・赤が揃っている神社は雨中よく映える。
愛宕神社(中郡大磯町大磯) 2011.06.11