夷子神社

索部:伊豆神社ノオト:2011.06.08

祭 神:蛭子命
創 建:不詳(式内:伊波氐別命神社論社)
例祭日:一月二十日
社 殿:流造/西南西向
住 所:伊東市川奈

『田方神社誌』静岡県神社庁

夷子神社
夷子神社
フリー:画像使用W840

創建は不詳だが、寛永六年の棟札があり、さらに古いが摩耗して読めなくなっている棟札も二枚あるという。川奈の湾は伊豆に人が住んでこのかた変わらぬ良港であり、良い漁場であったろう。その南東の岬に祀られるこの神社もどこまでも古く遡る神祀りの場であったろうと思われる。

しかし鎮座地は風雨強烈な岬であり、大嵐の度に倒壊・造営をくり返してきたという。頑強な石組みの玉垣がよく物語っている。

古老の口伝に、此の祠は殊に古く御神体は崇厳な自然石で、本殿真下の空井戸に鎮座している。
昭和の初期までは恵比寿様と称えられ、二十日恵比寿には見世物小屋・露店商が立並び大賑わいをみせたという。

『田方神社誌』静岡県神社庁

上記の一文が大変気になる所だろうか。『玄松子の記憶』様方の式内社のリストアップにはこの夷子神社が式内:伊波氐別命神社の論社としてあがっている。伊波氐別命神社の有力論社は南豆岩殿の諏訪神社であり、そちらは神社背後の急峻な岩壁の露出が御神体とされたのだろうが、こちらは空井戸の中の「崇厳な自然石」が注目されたのだろうか。

境内の祠
境内の祠
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『神社誌』には境内社として龍宮神社・稲荷神社が記載されている。写真右の石碑が「龍神」なので龍宮神社だろう。そして中央赤鳥居が稲荷だとすると左はなんだろう。手前にダイコクさんの像が奉納されている。

参拝記

夷子神社へは平成二十二年の九月二十日に参拝している。同じく川奈の姥子神社・川奈三嶋神社も併せて参拝している。特に「姥子」神社との関係で、もともと「ウバコ・ヒルコ」という祀り方をしていたのじゃないかとも思うのだが今の所はよく分からない。

川奈湾中央から夷子神社を望む
川奈湾中央から夷子神社を望む
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夷子神社は写真のように湾の端の岬に鎮座しているが、右の方に見えているドックを抜けないと行くことができない(公道は通じていない)。この日はドックでお仕事をされてた方がいて了承を得る事ができたが、ドックがお休みの日には参拝することができないかもしれない。

夷子神社から川奈湾中央を望む
夷子神社から川奈湾中央を望む
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夷子神社から川奈湾中央を望むと上の写真のようになる。東伊豆の湾では湾の両端に湾内を睨むように神社が鎮座している例がままあるが、ここもそんな神社かもしれない。この件は別途論ずる。

ちなみにこれは東伊豆町の稲取で聞いた話だが、漁師達はエビスさんを「おいびさん・おえべっさん」と呼んでいる。「えべすさん」が訛っていったのだ。ここ東伊豆の地では三嶋大神もまた「エビス」なのだが、この言葉の響きを聞くと各漁師町に鎮座する「おいびさん」はまた違ったより身近な恵比寿様なのだろうという感じがする。

夷子神社(伊東市川奈) 2011.06.08

伊豆神社ノオト:

参考:

諏訪神社(南伊豆町岩殿)
諏訪神社(南伊豆町岩殿)
南伊豆町岩殿の諏訪神社が式内:伊波氐別命神社の最有力論社。
▶諏訪神社(南伊豆町岩殿)

姥子神社
姥子神社
静岡県伊東市川奈
▶伊豆神社ノオト