赤松の蛇退治

門部:日本の竜蛇:近畿:2012.01.20

場所:兵庫県上郡町
収録されているシリーズ:
『日本伝説大系8』(みずうみ書房):「赤松の蛇退治」
タグ:討伐される竜蛇/竜蛇と〝左〟


伝説の場所
ロード:Googleマップ

「左巻き」の話。どうやらこの世ならざる竜蛇は「左」をその指標とするようで、人に化ければ左頬に傷があったり、沈む淵の渦は左巻きが良いと言ったりする。次の話もその一点が目立つ伝説。赤松城主円心公の伝説である。

千種川・上郡辺り
千種川・上郡辺り
レンタル:Panoramio画像使用

赤松の蛇退治:要約
ある日、赤松白旗山の城主、円心・赤松則村公が千種川で釣りをしていると、一匹の小蛇が足指をチロチロとなめていた。怪しみながら見ていると、小蛇は急に似合わぬ大口をあけて、公の足の親指を丸呑みにくわえた。公は驚き「ちょこざいな」とばかりに小蛇の頭を踏みつぶした。
すると、その小蛇は実は大蛇の化身であり、正体を現すと川淵にものすごい渦を巻き起こしてのたうち回り、水底へと消えた。円心公は館に帰り傷の手当をすると、家来に川下を調べさせた。調べると果たして大きな蛇が頭をつぶされ死んでおり、あたりの川水は血しおで赤くなっていたという。
大蛇が苦しさのあまり、体を左巻きにまきながら淵の底へ沈んだので、その辺りでは左巻きに渦が巻くようになったのだという。また、この件にちなんで赤松家の紋も左三つ巴に定められたのだそうな。

みずうみ書房『日本伝説大系8』より要約

土佐は安田の逆瀬釜に飛び込む妹娘(「姉妹の蛇身」)も「この渦が左巻きなら良いのに」とぼやきながら水に入っているが、どうも竜蛇は左巻きの渦がお好みのようだ。おそらくは右を正とするゆえに左・左巻きが負・魔の向きとされるのだろう。

右と左の価値の差の問題は様々な局面に現われ、一概にどうと言える程の事例を知らぬので現状あまり推測を並べ立てはしないが、特に渦の問題は注連縄の巻く方向や、神事の旋回方向などと関係すると思うので見逃すことがないようにしたい。

memo

赤松の蛇退治 2012.01.20

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