石川県の竜蛇

門部:日本の竜蛇:「怪異・妖怪伝承データベース」より

話 名 大蛇
資 料 郷土趣味 通巻17号
場 所 石川県
要 約 千蛇ケ池は、昔湖で大蛇が無数にすんでいて住民を害したので、白山権現が嘆いて大蛇を説得して池の中に入れ、再び出てこないように雪を降らしたのだといわれている。

話 名 蛇,黒い小石
資 料 民族と歴史 4巻1号/通巻19号
場 所 石川県
要 約 5、6年前、勇松という男が使いに行く途中に、百姓に殺されそうになっている蛇を買いとって助け、谷へ放した。帰路その谷を通ると蛇が婦人となって現れ、病気を治す黒い小石を授けた。その石で病人の患部をさすると2、3日の内に全快したという。

話 名 蛇,池の主
資 料 民族 3巻4号
場 所 石川県
要 約 娘がぶらぶら病で衰えて死にそうになったとき、老僧が来て、医王山の池の水を飲ませよと言った。飲んだところ本復したが、お礼参りの折にふたたび飲むと、娘は池に入り蛇になった。池の主に嫁いだと言われている。

話 名
資 料 民俗学 1巻6号
場 所 能登灘五郷地方採訪
要 約 ある婆が夢で黄金が穴の中にあるから取りに来いと言われた。翌日夫と取りに行くと、蛇しかいなかった。その夜、ふたりで来たからあげなかったと言われ、今夜馬に積んでくるからとれと告げられた。来た馬を捕まえようと尾をつかむと抜けてしまい、とれなかった。その黄金は山王の霊験により酒田の本間家に手に入った。

話 名 大蛇
資 料 民俗学 1巻6号
場 所 能登灘五郷地方採訪
要 約 櫨ケ淵には大蛇が棲んでいる。石などを投げ込むと祟るので、誰も寄りつかない。ただ、船の櫨をつけて置くことは一向に差し支えない。

話 名 大蛇
資 料 民話 通巻24号
場 所 笠師保民話採集
要 約 大蛇ヶ谷に住んでいる大蛇を村中の人が集まって退治することになった。柴を刈り、四方から火をつけると、大蛇は首を上げては倒れ、また首を上げては倒れた。その時の響きで村中の鍋釜がみんな割れたという。

話 名 ガン,大蛇
資 料 加能民俗 5巻9号
場 所 鳳至郡柳田村
要 約 男は干上がった田に水を張ってくれた大蛇に娘を嫁がせる約束をした。蟹(ガン)が大蛇を退治するが、今度はそのガンが童(ワロ)に化けて人を食べるようになり、弘法大師が雨乞いの神として祀った。

話 名 大蛇,蛙
資 料 加能民俗 5巻11号
場 所 七尾市
要 約 老女は大蛇に自分の娘を嫁がせる約束をした。しかし、娘は針と塩を使ってその大蛇を退治した。

話 名 大蛇,大蟹
資 料 加能民俗 5巻11号
場 所 稲舟村
要 約 稲舟村の笠原氏は、旱魃のときに田へ水を引いてくれた者に一人娘をやると誓った。するとある男が一晩のうちに全ての田に水を引いてくれたが、実は彼は大蛇だった。主人が娘をやるのを断ると戸口から大蛇は入ってこようとした。下水に棲んでいた大蟹が大蛇を9つに切ると、死骸は9つの池となった。以降、笠原家では蟹を殺さず、また家にくぐりを用いない。

話 名 大蛇
資 料 加能民俗 5巻11号
場 所 石川県
要 約 昔、旱魃のときにおやじが困っていると若い男が現れ、雨を降らせてやるから娘をくれと言って大雨を降らせた。男は実は大蛇であったが、姉娘は仕方なく嫁いで身ごもった。着物の裾に針をさしておくと蛇がつかないというが、身ごもった子をおろすには菖蒲湯につかるとよいというのでそうすると、四筋の蛇の児が出た。

話 名 憑き物
資 料 常民 6号
場 所 鳳至郡能都町
要 約 長期の病気は蛇、狐、猫などが憑いていると占師が診断する。

話 名
資 料 常民 6号
場 所 鳳至郡能都町
要 約 蛇が田に水を入れ、代わりに娘を嫁にもらう約束をしたが、百姓はやらなかった。蛇は大戸の穴から娘を連れ出し、蛇の子を孕ませた。祈祷師に見せて蛇の子とわかり、蓬と菖蒲の風呂にいれ、その湯を飲ませると蛇の子が下りた。菖蒲湯の由来。

話 名
資 料 常民 6号
場 所 鳳至郡能都町
要 約 川に手拭を落とした娘を蛇が見込んで、孕ませた。祈祷師に見せて蛇の子とわかり、蓬と菖蒲の風呂にいれ、その湯を飲ませると蛇の子が下りた。子供を生んだ後で菖蒲湯に入った由来。

話 名
資 料 民間伝承 34巻1号
場 所 輪島市小伊勢町
要 約 田圃に水を入れてもらった代わりに、見知らぬ旅人に娘を差し出す羽目になる。娘を石の長持ちに隠すと、旅人は蛇に変じ長持ちを締め付ける。流し場の下で飯をもらっていた赤ガニが蛇を殺し、娘を助けた。

話 名 池の主
資 料 近畿民俗 通巻58号
場 所 鹿島郡
要 約 蛇の池には、池の主として蛇が住んでいるという。池に石を投げ入れると、必ず大雨になるといわれている。

話 名 大蛇
資 料 とやま民俗 通巻24号
場 所 邑知郡
要 約 池の主である大蛇が村を守護する自信を喪失して娘に化けて村から出て、別の池に移動した。村民が雨乞いのために水を貰いに行くと、神からもう蛇はいないと言われた。

話 名 片目の蛇
資 料 常民 22号
場 所 石川郡鳥越村
要 約 平家の落人の治武殿は雪合戦のとき石が目にあたって片目になった。それで村の名前が左礫になった。治武殿は「俺が死んだら蛇道に落ちる、片目の蛇になる。蛇に両目がついたら成仏したということだ」と言い残して死んだ。昔は左礫には片目の蛇が一杯いたが、いまは両目の蛇ばかりになった。治部殿も成仏したという事だろうか。

話 名 片目の蛇
資 料 常民 22号
場 所 石川郡鳥越村
要 約 落人の治武殿は雪合戦のとき石が目にあたって片目になった。それで村の名前が左礫になった。治武殿は大判小判を埋めたという。また、「俺が死んだら蛇道に落ちる、片目の蛇になる。蛇に両目がついたら成仏したということだ」と言い残して死んだ。昔は左礫には片目の蛇が一杯いたが、いまは両目の蛇ばかりになった。治部殿も成仏したという事だろうか。

話 名 片目の蛇
資 料 常民 22号
場 所 石川郡鳥越村
要 約 平家の落人の治武殿は雪合戦のとき石が目にあたって片目になった。それで村の名前が左礫になった。治武殿は「俺は戦で人をたくさん殺したから、死んだら蛇道に落ちて片目の蛇になる。蛇に両目がついたら成仏したということだ」と言い残して死んだ。昔は左礫には片目の蛇が一杯いたが、いまは両目の蛇ばかりになった。治部殿も成仏したという事だろうか。

話 名 大蛇
資 料 常民 27号
場 所 鳳至郡門前町
要 約 山奥に大蛇がいて、夏ごろ出る。

話 名 長太ムジナ
資 料 常民 27号
場 所 鳳至郡門前町
要 約 夜、皆月から上尾沢へ行く細い道に長太ムジナが出た。道に岩が盛り上がって進めない。暫くすると戻る。その間に食料は盗まれている。大蛇や化け物になって出て盗んだりもした。ある人が気配がするので石を投げつけ、「勝負しろ」というと男が出てきた。「金玉を広げる勝負をしよう」と言って木綿風呂敷の大きいのを広げたら、ムジナは張り合おうとして金玉を広げすぎて、割ってしまって山へ逃げていった。それ以来ムジナは出なくなった。

話 名 白蛇竜神
資 料 加能民俗研究 4号
場 所 金沢市
要 約 白蛇は中国大陸の奥地に千年に一度現れ、五穀豊穣や天災を知らせるといわれている。雌雄2体いて、天災を知らせたり、水難・火難を除ける神としても崇められている。

話 名 大蛇,水の神
資 料 常民 27号
場 所 鳳至郡門前町
要 約 五十洲川の上流の雨乞いをする深い淵に、水の神の大蛇がいた。その大蛇がある美しい娘を欲しがったので、娘の両親は人形を作って中に毒を入れ、淵に沈めた。水の神の大蛇はその人形を娘と思って呑みこみ、死んだ。

話 名 蟹,大蛇
資 料 加能民俗研究 21号
場 所 輪島市
要 約 旱魃の際、田に水を入れてきれたモノに娘をやると言った。すると一人の若者がきて、一夜のうちに水を入れた。若者は輪島川の淵に住む大蛇で、娘を連れて行こうとした。娘の家を7巻巻いて戸口から入ろうとしたが、中に大きな蟹がいて、蛇を九つにはさみ切った。その骸が落ちたところは池になった。頭が落ちたところは親池と呼ばれ、笠原の家に祟りをなした。これを聞いた泰澄大師が法力をで退散させた。

話 名 大蛇
資 料 常民 27号
場 所 鳳至郡門前町
要 約 田の堤という池の奥の穴に大蛇が住んでいた。その大蛇を見てゾーッとして死んでしまった若い人がいた。田の堤もいまは干上がり、もうない。

話 名 蟹,大蛇
資 料 加能民俗研究 21号
場 所 輪島市
要 約 笠原の藤太が田んぼを作った。そこへある若者がきて、この田んぼにどうやって水を入れるのかと聞いた。藤太が弱って一夜のうちに水を入れてくれたら娘を嫁にやってもいいというと、その晩に大雨が降って田んぼに水が入った。男の正体は大蛇で、家を七回り半巻いてしめあげてきたが、娘が残り飯をやってかわいがっていた蟹が切断した。切られた蛇をカラスがくわえていき、それが落ちたところは池になった。

話 名 蛇,機織りの音
資 料 常民 27号
場 所 鳳至郡門前町
要 約 矢徳の蛇池は機池(ハタゴイケ)とも言う。周りにガマが密生している。ある女が嫁入りのとき、機の道具を背負って水溜りで小便をしたら蛇になり、水溜りは池になった。以来曇りの日には池の底から機織りの音がし、ガマが岸から回転しながら池に入り、また出てくる。

話 名 蟹,蛇
資 料 加能民俗研究 21号
場 所 輪島市
要 約 輪島の大百姓が旱魃のとき、干上がった堤を見て「この堤に水を張ってくれる者がいたら婿にしてやるのに」といっていると、晩に大雨が降って堤が水で一杯になった。その後、自分が水を張ったという侍が婿にしてくれといってきた。その家の女中が話を聞いていて、いつも残り飯をやっていた蟹に恩返しをしてくれというと、夢に蟹がでてきて、対策を教えてくれた。侍の正体は蛇で、家に入ってきたところを、蟹たちに七つに切られた。その蛇の骨が七つ島になったという。

話 名
資 料 常民 27号
場 所 鳳至郡門前町
要 約 うら盆に皆月に行った帰り、妖艶な美女がいたので若い者があとをつけたら、雪駄を打ち鳴らして蛇池に入った。池の神は蛇。近年池を埋めて田にできたのは、池の神の蛇が死んだからかもしれない。

話 名 大蟹,蛇身
資 料 加能民俗研究 21号
場 所 石川県
要 約 大蟹の鋏で九つに切断された蛇身の死骸は飛び去った先で九箇所の池になった。頭の部分は惣領村の深見に落ち、親池になった。この池に悪霊が住み着いて笠原家にたたっていたのを、行脚中の泰澄法師が法力で退散させた。

話 名
資 料 常民 27号
場 所 鳳至郡門前町
要 約 ある女が矢徳の池で、機織り道具を背負って小便をしたら蛇になった。以来雨が降ると池の底から機織りの音がする。盆になると見知らぬ女が盆踊りに加わる。帰るときは蛇池のあたりで雪駄を打ち鳴らして消えてしまう。

話 名 蟹,蛇
資 料 加能民俗研究 21号
場 所 奥能登地方昔話集
要 約 昔、蟹を可愛がっていた娘がいた。その父親が田んぼに水がなくて困っていたとき、田んぼに水を入れてくれたら一人娘をやるのにと独り言を言った。それを聞いていた蛇が水を一杯にして、いい男に化けて娘をもらいに来たが、家に入れなかった。夜に台所の節穴から蛇が入ろうとしたところ、娘が可愛がっていた蟹がその蛇を48に切った。それを鳥がくわえていって、落ちたところが全部池になったという。

話 名 怨霊,赤褐色の化け物
資 料 常民 27号
場 所 鳳至郡門前町
要 約 難破船の船頭を殺して生めたら怨霊が舟型の水溜りになった。それが蛇池。ここに泊まったら赤褐色の化け物が出たという。

話 名 大蛇
資 料 民俗採訪 通巻昭和52年度号
場 所 白山市河内町
要 約 昔、ある邸宅のお嬢様を池の大蛇が見初めた。大蛇は美しい男性になり娘のもとに通い、娘はやがて子供を身ごもり、子供が産まれた。もし蛇の子を孕んだら、5月に菖蒲湯を湧かして入ると良いという。それが転じて中絶するには菖蒲湯に入るとか、頭が痛いときに入るとかいう。

話 名 大蛇
資 料 常民 33号
場 所 石川郡河内村
要 約 年に1回、山の池の大蛇に娘を1人奉げる事になっていた。ある家に3人娘がいたが、1番目と2番目は断り、3番目が承諾した。両親は「大蛇が口を開けたら投げ込め」と言って針千本を渡した。娘はそのとおりにして、ちょうど娘の三回忌の法事の最中に帰ってきた。

話 名 カワラメ
資 料 えちぜんわかさ 通巻13号
場 所 石川郡白峰村
要 約 カッパをカワラメという。カワラメはお盆のころになると竜宮の乙姫様に人間のシンノコ(尻の子)を3本贈らねばならないため、その頃は川に入るのが最も危険とされた。ただしある文句を唱えれば安全とされた。

話 名 龍燈
資 料 加能民俗研究 通巻17号
場 所 七尾市
要 約 青竜が八手の観音に時々燈火を捧げる奇瑞があったので、龍燈山竜華樹院観自在寺と号すようになった。この観音は海から鹿に乗って出現したので渡鹿島観音ともいう。

話 名 龍神
資 料 島 通巻昭和九年前期号
場 所 輪島市
要 約 昔、龍池の畔に一九上人という僧が庵を営んでいた。ある月の美しい夜、1人の乙女が尋ねてきた。乙女は池に住んでいた龍で、余命がないので上人に読経してほしい、してもらえたら末代まで荒磯からこの島を守ると言って消えた。上人は読経し、翌朝、海女を池に潜らせてみると、池の底に龍の頭の骨があった。それ以来、波が島に上がることはなくなった。(舳倉島の龍池)

話 名 龍燈
資 料 加能民俗研究 通巻17号
場 所 鳳至郡穴水町
要 約 海上に発する不思議な火はゆっくりと磯辺に近づき、トメッサマの石のところに留って一旦消える。この火は龍燈様、石は龍燈石と呼ばれ能登半島各地に広がる伝承である。

話 名 龍燈
資 料 加能民俗研究 通巻17号
場 所 河北郡津幡町
要 約 倶利迦羅不動には山燈・龍燈の霊験がある。

話 名 龍燈
資 料 加能民俗研究 通巻17号
場 所 河北郡津幡町
要 約 弘法大師が岩動山を越えたとき龍燈が老松にかかり大日如来の尊容が奇雲の間に現れた。よって大師はここに二年とどまり大日尊と聖徳太子二歳の像を安置した。津幡町領家の広済寺である。

話 名 龍燈
資 料 加能民俗研究 通巻17号
場 所 輪島市
要 約 重蔵神社には八尾比丘尼の植えた古松があり、祭礼の夜には龍燈が上がる。ある年の大祭を太守の忌事があって延期したところ、定日に大龍燈が現れ近郷所々で見えたという。

話 名 龍燈
資 料 加能民俗研究 通巻17号
場 所 鳳至郡門前町
要 約 総持寺には樹齢三百年の龍燈の松がある。昔蛍山禅師が寺内に鎮座する八大龍王のために毎年盂蘭盆会の間この松に龍燈を掲げたという。

話 名 龍燈
資 料 加能民俗研究 通巻17号
場 所 羽咋郡富来町
要 約 高爪山の観音堂の脇にある薬師は荒木の海より上がった大仏で、毎年六月十八日の祭礼の前夜には杉の大木に龍燈が上がる。

話 名 龍燈
資 料 加能民俗研究 通巻17号
場 所 羽咋郡富来町
要 約 福浦港の和布刈神社では古老が毎年山に龍燈を見ると伝えられている。

話 名 龍燈
資 料 加能民俗研究 通巻17号
場 所 鹿島郡鹿島町
要 約 石動山に去年龍燈が上がったと、享保十二,三年頃の加賀藩の若年寄今枝主水が能登の小代官から聞いたという。

話 名 龍燈,山燈
資 料 加能民俗研究 通巻17号
場 所 鳳至郡穴水町
要 約 一本木諏訪神社では、火の玉をした龍燈が十二月晦日の夜に海中の大石のほとりから出現して、神社へ飛び移り、また飛び戻る。突端の岬を龍燈崎とよぶ。

石川県の竜蛇(「怪異・妖怪伝承データベース」より)

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