神社巡りの「方法」

庫部:惰竜抄:2011.02.23

神社巡りの「方法」というのもあるようでないようだ。しかし神社を巡って記録をまとめてみたいけれどどうやったら良いのか……という向きもあるだろう。そこで神社巡り二年生の私が、今どんな風にやっているのかをまとめてみた。「方法論」などという大それたものでなくて、実に現場レベルのノウハウのことである。本当に二年生(はじめて一年ちょっと)なので、達人の方から見たら片腹痛いところもあるだろうが、その辺はご愛嬌ということで。

神社マップを作る

行き当たってばったりというのも楽しいが、ひと地域網羅しようと思ったらこれでは芽が出る。まずは網羅しようという地域(市や郡の単位が良い)の神社マップを作ろう。

神社マップを作る
神社マップを作る
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Googleマップを使って神社マップを作る。
まずはこの「地図上の旅」というのも楽しいものである。

このためには何はともあれ神社の住所一覧が必要だ。これは「神社庁」にあたると良い。大概の都道府県に神社庁のWebページがあるだろう(ない所もあるが)。「○○県神社庁」で検索すれば出るはずだ。

ここに大概は市や郡の単位の神社一覧があるはずである。たとえば私が今進めている伊豆地方であれば、静岡県神社庁のサイトに行き、伊豆地方各市町村の神社一覧を得ることができる。すべての神社が神社庁に登録しているわけではないが、調査開始の目安としては十分だろう。

静岡県神社庁・伊東市の神社一覧
静岡県神社庁・伊東市の神社一覧
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必ずしも一覧となっているわけではなく、検索型の所もある。
目的エリアの神社庁が仕事熱心だとラッキーだ。

住所一覧が入手できたら地図を作る。私はGoogleマップを使っている。誰でもGoogleのアカウントを作れば「マイマップ」を作成することができる。

「ちず丸」
「ちず丸」
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ツールごとに使い勝手が違うのでやや面倒にも感じる。
んが、その辺は慣れ。使い倒してそこでストレスを感じないまでになろう。

ただし、Googleマップは番地単位の細かな住所が分かりづらい。ここは「ちず丸」というサイトを併用することをお勧めする。地区ごとに色分けされており、大概番地も出てくる。何より神社を良く押さえており、一定のスケールに拡大すると一発で位置が分かることが多い。私は現在「ちず丸」で位置を確認し、同位置にGoogleマップでポイントする、というやり方でやっている。

ちず丸とmapion
式内社を中心に海人族を追う西の神社マスター「かはひらこ」さんから、「web地図サービスについて、ちず丸で載ってない神社はmapionに、mapionに載ってない神社はちず丸に載っていることが多いような気がします。」とのノウハウを頂きました。

また、同地域に同じ名前の神社が重複する場合がある。特に稲荷社は何処でも沢山ある。こういった神社に関してはポイントする際に神社名だけでなく地区名・字名も入れておくと良いだろう。

沢山ある神社には地区名を
沢山ある神社には地区名を
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地名は貴重だ。それが大きなヒントになることもある。
また、昔の地名と今を繋げるのには慣れもいる。
少々面倒でも「地名とセットで」という癖を付けておいた方が良い。

こんな具合にまずは神社名とその位置がマッピングされた地図ができれば良い。

 

Googleマップの「マイアイコン」
Googleマップでは、自作のカスタムアイコンをポインタとして使用することもできる(既にこのページからのリンク先のマップはそうなっている)。アイコン選択モードで「マイアイコン」をクリックし、「追加」で画像を置いたネット上のディレクトリを指定すれば使用できるようになる。1マップごとに画像を指定しなおさないといけないので面倒だが、下のサンプルのような「神社っぽい」マップを作成することができる。以下に私のマップで使っているアイコンをあげておくので、ご自由にどうぞ。



自作する場合は32×32ピクセルで作るのが良い。それ以下で作成しても32×32に拡大表示されてしまう。画像輪郭外は透過にし、透過GIF/PNGのいずれかで保存する。


※ただし、この画像のディレクトリが保持されるかどうかは保証の限りではありません。気分次第でデザインが変わることも大いにあります(笑)。一旦画像データを落し、自前のディレクトリに保存したものを使うのが良いでしょう。

国土地理院のサービス
国土地理院」の地図閲覧サービスも紹介しておこう。上記のネット地図はスケールによって表示されるものが変わるので、神社等も拡大していってはじめて出てくる場合もあるが、国土地理院の地図は表示内容固定なのでとりあえず「鳥居マークがそこにある」事を確認するには好都合だ。



この方法は特に目的地域の神社住所一覧が得られなかったり、神社庁に登録されている神社が著しく少なかったりする時に威力を発揮する。もっともこれでは「何神社か」が分からないので他の方法と連携させながら詰めて行くことになる。時には現地に行くまで「?神社」であることもあるだろう。

神社を回る

資料が先か、行くのが先かというのはおそらくどこまで行ってもその人次第である。私はまず行く(笑)。

上の「神社マップ」ができたら、そのマップをプリントアウトして神社巡りに行く。もちろん一市町村一気に回るなどということはないだろうから、その日行く予定のエリアを印刷すれば良い。私はスクリーンショットをどんどん撮って、貼りあわせたものを印刷していく。

時として死活を分ける(笑)書き込み線
時として死活を分ける(笑)書き込み線
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それなりの範囲を回ろうとしたらそんな拡大スケールでは印刷できないだろうから、大通りから神社までの道が表示されてない場合もあるだろう。そこはあらかじめ書き込んでしまう方が良い。印刷したあと手書きで書いてももちろん良い。マッピングした神社の神社名が覚え切れない時は神社名も入れておいた方が良い。現地で道をたずねる、となった時に神社名が分からないと怪訝な顔をされる(良くされた…笑)。

iPhoneなどで直接Googleマップを現地で表示できたら便利だろうが、印刷した地図にはまた違う便利さがある。使い捨ての地図と割り切ってどんどん書き込みができるのが良い。21世紀とは言っても現場でのメモは紙とペンが数段便利である。

また、移動方法が車だったり自転車だったり歩きだったりと様々だろうが、何で行くとしても神社参拝一撃離脱ではなく、周辺を歩いて散策することをお勧めする。どんなロケーションにある神社なのか、近くに神体山のような山が見えたり、脇を川が流れていたり、少し離れた所に道祖神さんの一群があったりと、その時その周辺を歩いていないと見えないものも多い。そもそも神社は少し離れた所からどう見えるのかを見ておく方が良い。神社の森は社叢というが、なるほどと思う土地の目印になっていることが多いものだ。

神社から少し離れて道祖神さん
神社から少し離れて道祖神さん
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社地の周辺には緩やかな「神社的な空間」というものがある。
思いがけない発見はその空間に良くあるものだ。

そしてこれは人によって得手不得手があるだろうが、なるべく現地の方の話を聞こう。分かっていても分からないふりをして神社への道を聞くのが一番すんなり話が運ぶ(笑)。資料上、表記上は鹿爪らしい名前の神社も、地元の方は天王さんとか、明神さんとか親しげに呼んでいるものである。それを知るだけでもものすごくその神社との距離が縮まった気になるだろう。特に「昔は○○さんと言ったけどな」みたいな今の神社名と違う名前の話が出たらスマッシュヒットである(笑)。

ナビゲーションシステムの功罪
年寄りクサい物言いになるが、実感のあることなので書いておく。私はモバイル機器や車のナビゲーションシステムを神社巡りに採用していない。上に書いたようなプリントアウトした大雑把な神社マップで、いつも道に迷っている(笑)。
しかし、「それが重要だ」と思ってそうしているのだ。その現場で迷って「あの木立か?行く道はどこから?」と頭をひねってはじめてその土地の地勢が「体験」できると考えるからだ。
この土地勘を「神社センサー」と呼んでいるが、ナビを使うと確実にこの感覚は鈍る。それは先に行ってその土地そのものを思考する際に大きな差を生じてしまうかもしれない。

写真を撮る

まずしっかり参拝をしよう。ずかずか境内に入っていきなりパシャパシャ写真を撮り出すなど論外である。それでもいいじゃんと思うようなら神社巡りなどしない方が良い。大体神社巡りをしながら手水のひとつもスムーズにこなせないというのは格好悪い。というかスムーズにこなせるようになること自体がちょっと楽しい。観光地なんかで外人さんが見てる前でさらっとやってのけると拍手が出たりもする(おっつあんの私に向って「ビューティホー」とか言っていた…笑)。

手水指南の女の子(良く居る)
手水指南の女の子(良く居る)
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実は結構この「手水カール」のバリエーションもある(笑)。
実際はこの手順の後柄杓を立てて柄を洗って戻す。

ほかに参拝の方がいたらすみやかに身を引く。写真を撮りたそうに待ってるのも良くない。周りを回って参拝の方が帰られたら戻って撮影する。もっとも一宮格の大神社や観光地の神社は人が途切れない場合もあるので、無論ケースバイケースではあるけれど。

また、撮影禁止、進入禁止の断りを無視するなども論外だ。常識的に見て回ってよい範囲で撮影する。それ以上を望むなら、しっかりと管理者に相談の上行なうべきだ。

以上をふまえてようやくカメラ。
一眼が使えるならそれに越したことはないけれど、コンパクトデジタルカメラ(コンデジ)でも手ぶれ補正がそこそこ効くなら結構撮れる。かくいう私もコンデジで撮影している(Nikon P90)。これから買うというなら「広角」で撮れるものを選ぼう。神社は社殿を撮ろうという時に距離が稼げない立地がままある。広角というのは要するに広く撮れるのだ。

これ以上下がれない時広角で
これ以上下がれない時広角で
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望遠をとるか広角をとるかといったら広角をとる。
社地全域をおさめたい、という場合も広角が威力を発揮する。

撮影法などそれこそ駆け出しの私がウンチクを垂れるものでもないが、基本的に「たくさん」撮ろう。色々なものを撮る、ということでもあるが、一回構えたらその画角で露出を変えながら何枚も撮るのだ。フィルム代はかからないのでコマ数をケチる必要はない。帰ってから良いものを選んだら良いのだ。

露出を変えながらたくさん撮る
露出を変えながらたくさん撮る
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ぶっちゃけ「現地での感覚」と「帰って見た写真」は結構違う。
現地で上手く撮れたと思っても、そうは問屋が卸すものではない。

何処に注目して撮ったら良いのかは私にはまだ言えることではない。このページの最後に神社巡り十年レベルの達人の方々のサイトをリンクしておくので、くり返し閲覧して勉強しよう。

なお、由緒書きなどは撮影してしまうに限る(もちろん現地ではしっかり読む)。今のカメラはかなり高解像度なので、パソコンに落して大きく見れば充分読める。もちろんかすれていて写真では読みにくい可能性があるときはしっかりメモを。

細かな解説も撮ってしまう
細かな解説も撮ってしまう
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「何が重要な情報となるかは後から明らかになる」
これを金科玉条としよう(笑)。又は「後悔先に立たず」。

この「由緒書き」は結構後々モノを言う。以下に述べる「資料」を調べる過程では、その資料が古い場合がままあり、由緒書きの方にその後の新発見などによる経緯が書かれている場合があるのだ(時には祭神が変わっている場合さえある)。無論「ご当地フィルター」で大袈裟なことが書かれていることも結構あるが(笑)、それはあとから検討すれば良いことだ。あるなら必ず由緒書きは撮影しておこう。

苔に気を使おう



私は苔が好きだ(笑)。だからというわけではないが、神社撮影の際は足元の苔に気を使いたい。特に社殿脇などに回り込む場合、あまり一般の参拝客の行かない末社などの周辺。苔はきれいだが、ずるっとめくれてしまうと途端に残念なものになってしまう。そして、その剥がれた苔は何十年もかけないともとに戻らないものなのかもしれないのだ。

タイトルバックの写真



タイトルバックに用いる写真というのは特殊だ。意図的にそう撮らないと上手くない(タイトルを入れるための「余白」がいる)。ではどう撮ったら良いのかというとそれはタイトルのレイアウト次第なので「こう」とも言えない。あらかじめ自分が好むタイトルレイアウトを把握しておくしかない。が、ウェブ用ということなら写真解像度的には結構余裕がある(大きくトリミングすることができる)。トリミングを見越して少し引き気味に撮っておくのが次善の手だと言えるだろうか。

いくつかの注意

実地で幾つか思い知った注意点など。

まず蚊(笑)。
夏場の人知れない森奥の神社などは雰囲気は満点だが蚊がすごい。都会暮らしだと既に忘れかけているが、伊豆のヤブ蚊などジーンズの上から刺してくるのだ。これでは雰囲気のある写真も蜂の頭もあったものではない。夏場の虫除け対策はしっかりと。

次にクモの巣。
あまり人の来ない神社などは参道からしてクモの巣が横断している。自分が引っかかるだけならウザッタイだけだが、カメラに注意。レンズむき出しでレンズにクモの巣がベタッといってしまうと大変やっかいだ。田舎のクモの巣の粘度たるや相当のものである。レンズクリーナーを所持していなければ、そこで詰んでしまう。雨が見込まれなくてもレンズクリーナーセットは常備で、クモの巣地帯ではレンズにキャップを。

そして歩く場合。
夏場でなくとも初夏から初秋くらいまでは結構汗をかく。多くの神社は登ったところにあるものである。一日がかりの神社巡りで歩きベースと行ったら山登りするつもりくらいの心持ちで良い。要するに着替えを持って行った方が良い。汗びっちゃりかいてでは(たとえ乾いても)帰りの電車には乗れなかろう。

同じく歩く場合の田舎のバス。
歩きに関係するが、行きは歩きで頑張って参拝して、帰りはバスに乗ろう、と思って行ったら当該地のバスが最終16時。なんて事は田舎ではざらである。さらには土日は運休なんてのもざらである。目当てのバスに乗れなければ、また二時間とかとぼとぼ歩いて戻るハメになる(臨場感溢れる話だ…笑)。歩きで回る場合、その日最終予定の神社を参拝したあとの疲労感は結構なものだ。よくよく帰りの算段をしていかないと天を仰ぐことになる(笑)。

撮影に関して「風」。
コンデジ使いの場合最大の敵は風である。神社は昼でも暗いところが多いが、ここで風が強いと手も足も出なくなる。コンデジは感度が良くないので、暗ければシャッタスピードを落とさざるを得ない。そこで風が強いと神社のまわりの樹木の葉がみんなブレて写ってしまう。このような場合はより気を付けてたくさん撮影しておこう。もちろん風が止む瞬間を狙いはするが、帰って見てみると結構ブレていたりする。まったく同じ露出で何枚も撮影して、上手い具合にブレの出ていないものを採用する。

特に冬場のトイレ。
子どもの遠足かよ、と言うなかれ。田舎の一日散策というと公衆トイレやコンビニなどがまったくない、ということもある。夏場の歩きなら丸一日トイレに行かないということもあるが、冬場はそうもいかない。利尿作用のあるコーヒー等は止めておくことである。また、トイレのある所では「モヨオしてなくても」行っておく。

山道悪路とストック。
神社への行程で山道なり悪路(積雪とか)なりが見込まれる場合は「ストック」の導入をお勧めする。ストックを使うというのは要するに道筋にずっと手すりがついてるのとほぼ同じになるということだ。単独行で強度の捻挫、といった悲劇に見舞われても自力生還率は格段に上がる。ストックはグリップ部分にしっかりしたストラップ(手首を通す)がついているものを選ぶのが良い。本格的にしんどい山道等ではこのストラップに体重をかけられることがありがたくなる。

ストック
ストック
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はっきり言って安かろう悪かろうなアイテムだ。
アウトドア専門店でしっかりとしたものを選ぶ事をお勧めする。

資料を探す

そんなこんなで現地を回ったら、より詳しい神社の由来を求めて資料を探す。これは細かなところへ行けば行くほどキリのない話ではあるが大まかに。

まず都道府県単位の神社を網羅した資料を探してみよう。このレベルの資料を見つけるのが第一である。大概神社庁が発行している。神奈川県は神奈川県神社庁が『神奈川県神社誌』という資料を出している。必ず神社庁が、というわけではなく伊豆静岡なんかは『静岡縣神社志』という資料が一番網羅的ではある。この辺は土地によりけりだろうが、何かはあるだろう。神社庁資料は旧郡単位のもの、というケースもままある。

いずれにしても何処もあまり新しくはないだろうから普通絶版だろう。当該地区の大きめの図書館にあたると良い。今は大きめの図書館は大概ネット上で蔵書の検索ができるので探してみよう。思わぬ「当り」が見つかることもあるので、「神社」でキーワード検索してたくさん出てくる候補を良く見ておく方が良いだろう。

また、全国の神社を巡り詳細な記事をあげつづけておられる玄松子氏が、各地のこのレベルの資料を掲載されている。ここに自分の地域のものがあったら、その資料がある図書館を検索すれば良いだろう。図書館で実物にアクセスできたら(大概禁帯出なので)、バシバシコピーを取ってくれば良い。ちなみにこの手のコピーはクリアファイルに納めるのがもっとも使い勝手が良い。

図書館では「県史」や「市史(町村史)」も見てみよう。大概「通史」と「資料編」があるが、丁寧なところは「民俗」や「寺社資料」の巻がある。あるいは一冊の中にその項目がある。意外とこの県史などの民俗資料の充実は馬鹿にならないものがある。神社に直接関係しなくても周辺地区の興味深い記事がたくさん見つかるだろう。

次に、さらにミクロな地域に絞った資料を探してみよう。図書館には通常流通していない個人がまとめた資料などが「地域資料」のコーナーにあるのだ。出版物というか、インクジェットプリンタで印刷したものをファイルした、というようなものもあり、さらには手書きの「ノート」のコピーをまとめたようなものもある。大概地域の「シルバー大学」みたいなところの生涯学習カリキュラムで行なわれた地元のおじいちゃんやおばあちゃんがまとめてくれた資料である。

無論個人のまとめたものなので、出典から何からキッチリしているものばかりではないが、神社庁の管轄外の小社などが網羅されているものもある。これは祭神が調べられているだけでも大変ありがたい資料だ。いや、その存在が記されているだけでもありがたい資料である。自分で裏を取るにしても、何もないところを調べるのと確認をすれば良いのとでは雲泥の差が出る。

このレベルは大きな図書館というよりその神社群のある地域の図書館を探す。たとえば伊東市の神社を巡ったら併せて伊東市立図書館にも足を運んでおく、というような。神社一覧でなくても地元の研究家が地元新聞などに寄稿したものが造本されていたりもする。さらにローカルな民話の類いが驚くほど沢山あることも分かるだろう。

ここまで調べたら、それぞれの資料に出典元としてさらにディープな史料の存在が記されているはずだ。江戸時代にも盛んに「地域史」はまとめられており、たとえば相模には『新編相模国風土記稿』という大部の史料があり、もっと絞ってもたとえば伊東には『伊東誌』という嘉永年間の史料があったりする。そのような史料にアクセスできるとまた一段深い調査ができるだろう。

式内社

平安時代後期に『延喜式』というそれまでの律令をまとめたものが編纂されており、この中に『神名帳』という各地の神社を列挙したものがある。この『延喜式神名帳』に記録のある神社を「式内社」といって、由緒のある古社の指標となっている。神社巡りをする方にはこの式内社巡りを目標にしている方も多い。

何といっても平安時代の頃の話であるので、その後「その神社が今のどの神社のことなのか」分からなくなってしまったものも多々あり、江戸時代この方「ここに違いない」「いや、オレはこっちだと思う」と同定研究がくり返されてきた。そしてその中で「式内社候補」とされた神社を「論社」と言う。

このあたりを集大成した資料として、『式内社調査報告』という全25巻のシリーズがある。また、ざっと近隣の図書館を検索してみた感じだと『日本の神々 -神社と聖地-』(白水社)のシリーズも結構入っているだろうか。こちらは式内社に限らずに、地域ごとの古社をあたっている。

回る神社群に古社・大社がある場合は、これらの資料もあたっておくのが良いだろう。『式内社調査報告』は入手困難なので、大きな図書館を検索しておくのが良い(『日本の神々 -神社と聖地-』は絶版していないようだ)。また、各地の式内社に関してはネット上にもその一覧がまとめられている。これも先にあげた玄松子氏の一覧が細かな論社までまとめてくれており、大変参考になるだろう。

まだまだ神社資料は追えば追うほど「増えてくる」ので(笑)、キリがないが、基本的にはこのあたりを調べたら良いだろう。そして、ここからが本題である。

神社マップ再び

つまり、こんな具合の調査報告をする人が各地に一人いて、ネットに報告をアップして、それが共有されたらハッピーじゃない、という話なのである。一人の人間が何十万社もある全国の神社に通じるなど土台無理な話なので分業がよろしい。そして、そういった網羅的な資料は未だこの世に存在しない。

もちろん式内社のような由緒ある神社は網羅的に研究されているし、そもそも上にあげたような資料もある。加えて現在もこのあたりを回って報告する人は少なくない。んが、村の鎮守さんレベルを網羅しようという人はあまりいないようなのだ。こういった小社は小社で、その全体が俯瞰できればまた大きな意味が見えてくるはずであり、その価値は決して式内社にも劣るものではない。

そういった試みが出てこないかなぁ、と思ってのちょっとでもハードルを下げてみようというこの一文なのでした。さて、そしてそのネットにアップする、という実際的な点を。

実地で写真を撮ったりしてきたら、まず先に作った神社マップに写真を載せてみよう。手前味噌だけれど実例を見たら話が早くて、こういうことである。リンク先のマップの色の濃い鳥居マークの神社をクリックすると写真入りの吹き出しが出る(薄い色の鳥居は未参拝)。

神社マップに写真を載せてみる
神社マップに写真を載せてみる
フリー:画像使用

特に難しいことはない。専門知識がなくても「リッチテキスト」という編集パートを選ぶと写真を貼付することができる。私は自分のサイトのサーバから写真を引いているが、Googleの画像共有サービスの「Picasa」を使ってそこに写真を上げておけば、それを引いてくることができる。おそらくこのマップは開いた時にそのマップ上のすべての画像をロードしているので、あまり大きなものを縮小表示させるようにするのはよろしくない。私は幅237pixにあらかじめ縮小したものを使っている。最初に地図は市町村単位が良いとしたのもこの画像添付を見越してのことだ。都道府県単位で地図を作ってしまうと多分重たくなりすぎてしまう。

とりあえずはここまででも大変楽しい資料ができてくるだろう。私はさらに地図から各神社の記事にジャンプする予定なので、地図上は写真しかないが、写真の下に祭神を列挙するだけでもかなりの資料になると思う(もしやってみたら twitter などから教えてください)。

だって、この調子で全国津々浦々の市町村の神社マップが出てきたらそれだけでもすごくないですかね。そしてそれは一県に一人〜数人やる人がいたらそう遠くない未来に実際できちゃっておかしくないものなのですよ。今迷ってる人は是非やろう(笑)。

さらに

さらに資料をまとめたりすることに興味のある方は是非にブログやサイトにしたらよろしい。はっきり言ってどこか「ひとつの市」の神社を網羅した資料すらネット上にはないのだ。まとめるだけで存在価値のある資料が公開できるのだから結構美味しいテーマである。

別に深い考察やらをせにゃならんというわけではなく、上のような資料を調べて基本的な情報が記載されてるだけで良いのだ。ネットで無料で公開するのだから「それ以上」がしんどかったら「誰か続きを調べてくれい」でも良いのだ(笑)。

ただし、これは私もまだ上手くいっていないところだけれど、自分の推測部分と出典資料が明記できる情報とはしっかり分けるように心がけないといけない。逆に言えばしっかり分かれていれば盛大に自説を披露してもしていけないということはない(どのような評価が返ってくるかは知らないが…笑)。

一週間に一社まとめたら一年で50社にはなるし、50社といったら畿内などの神社密集地でなければそこそこの市町村単位の神社一覧ができてしまうのだ。くり返す。今迷ってる人は是非やろう(笑)。

まずは自分の住んでる(あるいは気軽に行ける近隣の)市町村の神社一覧を神社庁であたってみると良い。意外と20社くらいしかなかったりするところもあるものだ。この条件なら気軽に週末にちょこちょこ出かけられるし、まとめていけるだろう。なんと一年のうちにその町の「神社マスター」になれるのである。

そんなところで。あとはこの道十年選手の達人たちのサイトを紹介しておくので、存分に参考にされたい。繰り返し見て勉強するとともに、モチベーションを保つのも重要だ。また手前味噌が極まれりだけれど、私の twitter の方もあげておくので上の一文じゃ良く分かんねえ、という場合は些細なことでも質問等どんどんどうぞ(夜しかいませんが)。ggrksとか言いませんので(笑)、お気軽に。

その他龍学関連
「惰竜抄」の「○○行」というタイトルは基本的に神社巡り報告のまとめです。実際私がどんな具合に回っているのかが見えるでしょう。このページ右上のタイトル一覧から。

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神社巡りの「方法」 2011.02.23

惰竜抄: