小松倉の男池の主

『山古志村史・民俗』原文

むかし、百姓家だんだが、若い衆も女子衆も置いて、子守も置いた。その人が、子背負って池の端へ行っていたら、池の中へ池の端から、ずっと綺麗なタブリ(たすき)みたいなものが、ふわふわしてあったんだそうな。それを取ろうてがで、池の中に入ってみたれば、そいつがだんだん向こうに行って、それを追いかけていって、だんだん深みにはまって、その娘が溺れて死んでしまったと。そのタブリみてんがずうと引っぱっていって、それに絡まって死ぬんでしょうが。

それで、その池破らんかって、男池を。太い奴だって、村一番の旧家の娘を引き込んだって。その時、池を破ろうがってあったそうだども、ある時、夢ジラシ(知らせ)に大蛇みてんが、
「どうか破らんでくれ。こんだ二度とこういうことはしないしけ」
たで、やめたって話もある。

〈小松倉・松崎六平(M34・9・8生)〉

『山古志村史・民俗』より