ヘエベエ弁天の由来

千葉県八千代市萱田

昔、名主のところに旅の女が雨を避けてやってきて、一夜の宿を頼んだ。名主の家なので奉公人部屋などもあり、名主は女を泊めてやった。すると女は大変大事そうなものを抱えており、風呂にまで持って入っていた。

名主はそれが金だか何かはわからなかったが、大変欲しくなり、女の寝ているところへ行ってそれをとろうとした。すると女は目覚め、名主と争いになって、殺されてしまった。名主がそのものを開けてみるとそれは弁天さまであった。

名主はいいように届を出して女を裏山に葬ったが、それからやることなすことみな失敗し、落ちぶれてしまった。これは弁天さまの祟りだといって、今の新萱田の田圃のヤツドの一番上に弁天さまを祀ったが、やはり代々うまくいかなかったという。

『八千代市の歴史 資料編 民俗』より要約


「そいうイワレがあるんですよね。ヘエベエ弁天てね。」と最後にある。何がヘエベエなのかは語られていないのだが、この名主のことだろう。竜だ蛇だといってはいないが、房総には白蛇の弁天さんが姫に化けて泊まりに来る、という話はままあり、その一環とみてよいと思う。

そして、この話を取り上げたのはその「ヘエベエ」の名前の部分による。平兵衛という名は、その音から大蛇伝説に結びつくことがあるのだ。上野吾妻の話など参照されたい。

平兵衛池
群馬県吾妻郡中之条町:旧六合村:草津の名家・湯本平兵衛の娘が、供をつれて山奥の沼に行き、自ら入水し竜となった。

この萱田の弁天の由来も、同様に「ヘエベエ」の名が蛇の話を呼んだ例ではないかと思う。