片目になった赤尾のお諏訪さま

埼玉県坂戸市赤尾

昔、大雨が降り、越辺川が氾濫し島田が危なくなった時、島田のお諏訪さまと赤尾のお諏訪さまの姉弟が竜神となってあらわれ、小沼にある附島の土手をきろうとした。すると、小沼のお諏訪さまが槍を持ってあらわれ、大ゲンカとなった。そのとき、赤尾のお諏訪さまは槍で目をつかれたのがもとで、片目になったといわれている。(話者・赤尾 林貞治)

赤尾のお諏訪さまと尻尾のキズ[参考] 昔、大雨が降って越辺川が氾濫したとき、島田のお諏訪さまと赤尾のお諏訪さまとが竜神となって、小沼にある堤防をこわしに行った。 小沼のお諏訪さまが、それをふせごうと槍をもって応戦した。そのとき、赤尾のお諏訪さまは槍で尻尾を切られた。その時のキズが今もお諏訪さまの社にある彫刻の竜神にのこっている。その後、赤尾のお諏訪さまの周辺にいる蛇はみな、尻尾が切れているといわれている。(話者・中小坂 増田作平)

『坂戸市史 民俗史料編 I 』より原文


島田のお諏訪さまを夫ないし弟とし、この隣村赤尾のお諏訪さまは妻ないし姉とされる。この二神は越辺川が溢れそうになると竜神となって下手の小沼の堤を切りに行く、という伝説がある。

島田のお諏訪さま
埼玉県坂戸市島田:越辺川が溢れそうになると島田と赤尾のお諏訪さまが竜神となり、下流の小沼の堤を切りに飛んで行った。

この際、小沼の方のお諏訪さま・ないし竜と化した僧・梶坊が対抗する、という筋なのだが、その戦いで赤尾のお諏訪さまの竜はこのように槍傷を負ったということなのだ。

神社の由来としては「赤尾下組の氏神としての祭神諏訪社は今より四百五十数年前、永正十五年林本家の祖である林信興が信濃の国(長野県)諏訪より移住し開拓の神として招請したもの」という(同市史)。

いずれにしてもこの伝説群に見る社で現在「神社」として構えられているのはこの赤尾諏訪神社だけとなる。確かに御本殿蟇股には竜が刻まれていた。目がどうかまではわからなかったが。また、切られたのは尻尾だ、という話もあるが、そちらでは社付近の蛇はみんな尾が切れているともいう。