茨城県取手市
わたしのおばあさんからわしら寝物語りに聞かされた事があんですよ。米ノ井の三仏堂でもって、将門の親は丁度戦争で出陣する時、お産したんだって。それが後に将門だちゅうんで、お産した時にね。その母親が矢でも鉄砲でも体に通らないようにって、蛇になって火を吹いて、体をなめて、そんで脳天だけを残しておいた話なんです。(以下略)
『取手市史 民俗編 II』より原文
原文は「将門の最期と桔梗御前」という小見出しの話となり、以下桔梗が藤原秀郷に将門の弱点をもらす一般的な展開の話が続く。
ただし、将門の弱点は、影武者のうちにあって本物はこめかみが動くので分かる、というものと、鉄人である将門はこめかみにだけ矢が通る、というものがあるが、これは後者の話になる。話の中の「脳天だけを残しておいた」というのがそうで、母大蛇が頭だけ火で舐めなかったので、そこが弱点ということ。
将門伝説の中には将門の母が桔梗で、妊娠したので舟で流されてしまう、というものもあるが、どこのギリシア神話かという話である(笑)。ともかく、このように将門にも「母が蛇となる」という伝説が下総相馬郡域では広く語られる。将門もまた竜蛇の産んだ王だといえるだろう。
なお、竜蛇が火を吐いて鉄を鍛える、というモチーフだが、これは名刀を残した刀鍛冶が竜蛇だった、という伝説の分布がある。