蛇沼の話

宮城県石巻市内:旧河北町

河北町に蛇沼という用水池がある。昔このそばにお寺があった。寺には毎年燕がやってきて巣をかけた。ある時、和尚さまはこの燕に、いつもこの寺に来ているのだから、ひとつくらい寺のためになることをしても良かろうに、と言った。すると、数日して燕が一粒の南瓜の種を持ってきた。

裏の畑に撒くとどんどん芽が出て大きな南瓜が生った。ある日、小僧さんが和尚さまが出かけた隙にこの南瓜を食べようと採ってきて切ってみた。すると、種もワタもなく、中からはうじゃうじゃと小蛇が出てきた。小僧さんはビックリしてその南瓜を裏の池に捨ててしまった。

和尚さまが戻り小僧さんがその話をしていると、不意に雷鳴が轟き、豪雨となった。あまりの恐ろしさに和尚さまは読経を続けたが、池に捨てられた南瓜に棲む小蛇はたちまち大蛇となり、池も大池となってしまい、大蛇は大暴れをした。それからこの寺では南瓜を作らなくなった。

未来社『宮城の民話』より要約


岐阜県大野郡宮村(現高山市)にもほぼ同じ話がある(寺ではない)。しかし、和尚さんが礼をしろと燕にいうのはそうおかしくないように見えるが、そのお礼の南瓜から蛇が出てきて大水になってしまう、というのは良く分からない。

この南瓜が七夕伝説の天の川の流れ出す瓜に同様なのは間違いないだろうが、燕はなぜ禍をもたらしたのだろう。

この話からはこれ以上わからないのだが、千葉県木更津市に、同系の話で正しく燕がお礼をするという筋の話がある。もしそちらの大筋(礼をした、という大筋)が本来であるならば、こちら蛇沼も蛇沼というありがたい用水池ができた、というような話だった可能性もある。比べてみておかれたい。

つばめの恩がえし
千葉県木更津市富士見:ツバメが恩返しに人を咬まない蛇のタネを持ち帰る。