食用蛙の鳴き声

東京都大田区


大正の終わりころ、鵜ノ木の二丁目、三菱銀行のところは池だった。大雨が降って、多摩川の水があふれたが、しばらくしてから、グゥーグゥーと夜になると妙な声がした。大蛇がいる、と大騒ぎになったが、見ると、食用蛙(牛蛙)だった。〔嶺 男〕

『口承文芸(昔話・世間話・伝説)』
(大田区教育委員会)より

追記

ウシガエルは1918年に日本に持ち込まれたというので、それから戦前辺りにはこのような話がまま見える。三菱銀行というのがどこにあったのかわからないが、同地区にはもう池は見えない。

もっとも、ウシガエルの鳴き声ありきで大蛇の鼾の話があるのかというとそうでもなく、『新著聞集』のころにはもう大蛇は大鼾をかくものではある(「信州高遠大蛇を斬害す」)。