クロンドンドン・シン・ソンビ:後半

韓国・忠清南道青陽郡

(前半:蛇の新郎と結婚した新婦だったが、美丈夫に化した新郎に嫉妬した姉たちの姦計により、新郎は旅先から戻ってこなくなってしまう)

そこで新婦は新郎を捜す旅に出た。畑を耕す老人に出会い、代わりに畑を耕し、教えられた老婆と出会って、代わりに洗濯をし、険しい道を行き、死力を尽くして峠を登り、長い髭の老人と出会った。老人は抱いていた子犬を下し、この子犬についていけば、クロンドンドン・シン・ソンビのいるところはわかる、と言った。

子犬となお道を行くと、川の畔に着き、白い盥があった。子犬が盥に乗るので新婦も乗ると、水の上を流れ、やがて水中に沈んだかと思うと浮かび上がった様な気がし、新婦が目をあけると宮殿のような瓦屋根の家があった。何とか時間を稼ぐうちに、家の主らしい堂々たる風采のソンビが庭の中に入ってきたが、それはまさしく新婦の夫であった。

夫は新婦を見て、どうやってここに来られたのかと驚き、その苦難の道の話を聞いたが、すでに二人の妻がいることを告げ、また新婦が自分の抜け殻を守る約束を守れなかったことを叱った。しかし、やはりまた新婦を迎えたいと思い、どうしたら良いかと夜を徹して考えた。

そして夫は、二人の妻と新婦に問題を出した。三人の女は各々高いかかとの木靴で薬水を取りに行ったり、虎の眉毛を抜いて持ち帰ったりなどした。さらに、寒い冬に苺をとってくるように言われ、新婦は寒中の山に凍え死にそうにもなった。しかし、その山中の洞窟で、別世界の暖かい土地に住む老人に出会い、苺を持ち帰ることができた。二人の妻は山から帰ることなく、夫は新婦を許して妻に迎え、その後幸せに過ごしたという。

崔仁鶴・厳鎔姫『韓国昔話集成2』
(悠書館)より要約

これは七夕・天人女房・竜宮女房などの話において、難題を突き付けられるのが男のほうであることと対になっている。本邦では、あるいは姥皮の話型と親和性があるかもしれない。

しかし、なぜ途中登場する不思議な老人たちが新婦に味方するのか、という点はよくわからない。類話では、そもそも新郎は天上の仙官であった、ともいうから、天上界の存在が助けたのだ、とは見えるが、また少し違う意味もあるかもしれない。

なお、前半でも述べたように、アジアで多くこの話は、姦計をめぐらし妹(新婦)を殺すなどする姉が重要になるのだが、韓国の場合は姉は皮を燃した後は出てこなくなってしまう。一方、夫が去った先で得ている妻二人、という登場人物が出てきており、これはスライドしたポジションであると見てよいのじゃないかと思う。