出潮・退潮・津浪の理由

韓国・大邱広域市

海の中には非常に大きい鯰がいる。それは海の底の大きな穴の中にすんでいて、その穴から出ると、海の水が穴へ入るので退き潮となり、反対に、それが穴に入ると、穴の水が出るので出潮となる。そして時々あばれ出すと海があれて海溢(つなみ)になる。

孫晋泰『朝鮮の民話』(岩崎書店)より

オーストロネシア系の指標となるのじゃないかと目している鰻の話は韓国朝鮮にはほとんどない。これは実に見事にないのだが、これは?という一話がこの話となる。

註に「鯰は朝鮮語ではミヨキあるいはミコジといわれ、どじょうの形をしたものとされている」とあって「ナマズ」ではない。もともとあのナマズは中国では「鮎」の字だったのであり、鯰の字でナマズを指すのは日本でのこと。

ともかく、フィリピンの方では月と太陽の子であるともいう大蟹が海の干満と津波を起こすという話がつとに語られるのだが、この韓国の伝はその蟹が「鯰」に置き換わったものと見える。これがフィリピンから台湾辺りで(おもに地震・洪水の線で)蟹と鰻が交錯し入れ替わるような様子があったことからすると、この「鯰」は鰻のことだったのじゃないか、と思える。

この話は大邱広域市達城郡で採取されたとあり、内陸であって海際でなく、本来海に近いところで語られた話であろうと思うと、そこがどこかという点が非常に気になる。