坊津の一乗院をとりまく山々に弁財天をまつった祠がある。これが七か所あるところから七所弁財天という。
これはいつのころか、一乗院に相当な高徳の上人がいて、村人からたいへん尊敬されていた。
ところがいつの間にか、この上人に七人の美女がかしずいていて、これを知った村人達は、「あんな偉い坊さんでも女色にはかなわないのか」と、だんだん、その噂が大きくなっていった。
一方上人の方では、このような噂が耳に入るとたいへんに迷惑がられて、さっそく七人の美女を呼んで、こんこんと仏道を説き、すぐこの場から去るように言いつけた。
七人の美女は、かねてから尊敬している上人のことばをきいて、迷惑をかけては……とたちまち七匹の蛇に変身して一乗院を見守る山上にそれぞれ登っていった。
これが七所弁財天だといわれている。