蛇になった娘

鹿児島県指宿市

上野のある家に七歳になっても歩けない子がいた。ある日水汲みに行きたいとせがむので、後をつけて行くと、しっかりした足どりで池の方へ行った。そしてその頭に七又の角が生えた姿を水鏡に写していた。

驚いた母親が「お前のような奴は私の子ではない。もう二度と家に帰って来るな」というと、その子は池の中へ飛び込み、二度と姿を現すことはなかったという。(『開聞町郷土誌』)

『日本伝説大系14』(みずうみ書房)より

かつての開聞町の話とある。その池の名などは不明。未來社『日本の民話22 肥後・薩摩・大隅篇』に見る話と同じと思われる。「七歳になっても歩けない子」という点が目を引く。鹿児島には諾冉神のはじめの子・ヒルコは足のたたない美しい〝姫〟であったという「蛭子姫」の伝説と、鹿の口から生まれた足の悪い(蹄足の)「大宮姫」の伝説がある。