三人姉妹

宮崎県東臼杵郡美郷町

昔、田植えが終わっての祭が「おんださん」であった。力いっぱい働いた時季のあとで、老いも若きもうきうきと集まった。特にここ数年は若い衆がはりきっていた。というのも、いつの頃からか美しい三姉妹が田植えを手伝ってくれ、その後おんださんに来るようになっていたからだ。

三姉妹は誰よりも早く田に入って鮮やかな手つきで加勢しては帰って行った。しかし、どこの人たちなのか、誰も知らなかった。姉妹の美しいことは天女のようであり、姉妹が来るようになってからは日和まわりも不思議と良く、作物は毎年素晴らしい出来ばえだったという。

ある年、勇気ある若者が田植えが終わった後、帰る姉妹をつけた。すると、しめ岩(おせり入口の大岩)からおせりさんの方に行き、滝上の主淵にスーッと入って行った。しばらく若者の方を悲しそうに見ていたという。そしてそれ限り、三姉妹はおんださんには姿を見せなくなってしまったという。

『西郷村史』より要約

田植えを手伝ってくれる神霊の話。竜蛇は出てこないが、話中の「おせり」という滝のヌシが「おせりさん」という竜である。このような不思議な早乙女の話は、必ずしも竜蛇譚というわけではない。お地蔵さんであったり、山姥であったり、様々な神霊が手伝ってくれる話となっている。

多く見られる「鼻とり小僧さん」の昔話などはお地蔵さまだったりするが、ここ「おせり」の話は間違いなく滝淵のヌシの竜「おせりさん」の眷属であると語られている例となる。ここではこの点で他から引くためにあげた。

なお、「増える」早乙女の話というのは、「消える」早乙女の話と表裏なのじゃないかと考えているのだが、正にそれが表裏一体であるというイメージも、このおせりの早乙女伝説にはあるだろう。