螺側

愛知県知多郡阿久比町

阿久比村大字宮津に俗称螺側という所がある。昔ここの地の中から大きな唸る声がするので村の若者が見張っていたところその声益々大きくなり、その中に地中から法螺貝の大きなのが這い出て付近に大嵐を巻起した。その中二匹を捕らえたが三匹は天井高く飛び去ったという。捕らえた二匹の中一匹は現在宮津にあって洪水の時人寄をする際吹鳴らすものとなり、他の一匹は亀崎町大字有脇に与えたと伝えらる。

愛知県教育会『愛知県伝説集』(郷土研究社・昭和12)より

俗称とあることからも小字以下の地名と見え、現在宮津付近で螺側と呼ばれるのがどこであるかわからない。読みは「螺」は付近の他の例からも「にし」だろう。半田市有脇とどういう関係があったものかも現状不明。

ここでは、地中の法螺貝が鳴動し荒天を呼び、天変地異をもたらし、これが抜け出すと土砂災害が起こる、という「法螺抜け」の話の典型的な筋のものとして引いた。愛知県にはこういった話が多いが、この宮津の話の筋には特にいろいろな要素が揃っている。