大蛇の白骨

静岡県榛原郡川根本町

天正年中、桑野山村付近の数千年を経た大蛇が海へ出ようと大井川に蟠臥したので、忽ちに流れがせき止められ、一面の水となった。ところが、この異変により高山が崩れ落ち、大蛇を押し潰してしまった。

年を経て大蛇は白骨となって現れ、肋骨は山畑の鹿垣に、肋骨は臼に、車骨はいろいろな寺の厨司の踏台などにされた。万光寺も踏台に骨を用いたが、小蛇が床下から多く出たので、大井川に流したという。これらの蛇骨も年々持ち去られ、今はほとんど見ることがないという。

小山有言『駿河の伝説』
(安川書店・昭18)より要約

災害の時期が天正年中と示されている点参考になる。また、もともと大蛇が起こした異変により大蛇自身が押し潰されてしまっている点がもっとも目を引くところだろう。今の話では祟った筋になっているが、もとは違ったのではないか。