蛇くだり

原文

大昔、子浦港が池だった頃のことです。池の主に大蛇(おろち)が棲み、毎日毎日妻良・子浦の山々の峰と池の淵をぐるぐる廻ってこの池を治めていました。

今日もいつものように巡廻をし、子浦の日和山まできた時、突然ゴオーッと地響きが轟いたかと思うと、見る見るうちに池の一辺が崩れおちてしまったので大蛇は妻良山へ行くことができません。仕方なく崩れおちたばかりの断崖絶壁を駈け下り妻良山へ上っていきました。

今も黄褐色の岩肌に大蛇の姿が黒く刻まれており、人々はここを蛇下り(じゃくだり)と呼んでいます。また、ここが崩れたので駿河湾とつながり子浦港ができたといわれております。

南伊豆郷土館『南伊豆民話集』より