花倉白蛇

静岡県藤枝市

花倉村阿弥陀ヶ谷(葉梨村)巨岩のエミに白蛇が棲み、常に岩の凹み穴を匍っている。近隣の人が岩の破れ目から米を穴の中に投げてやる。蛇はそれを喰うて冬を越す、他所には行かぬ、蛇は全体白銀のように光っている。(藤奉記)

小山有言『駿河の伝説』
(安川書店・昭和18)より

阿弥陀堂があったので阿弥陀沢という。阿弥陀堂およびその傍らの巨岩というのが今どうなっているのかは不明。『民俗静岡』(5号)には、二匹の白蛇が見えたとある。

また、『藤枝市史 別編 民俗』によると、白蛇様の好物は蛙で、蛙を供えて失せ物探しなど祈願したという。蛙と「帰る」をかけて、戦時中は兵士の無事の帰還が祈願されたそうな。

さらに同市史によると「この白蛇様の体は、山を七巻き半して尾が焼津の海に届いていた。白蛇様がその尾で魚を追ってくれるので、焼津の漁師は漁が良くなるのだと語り伝え、彼らからの信仰は厚い」という側面も持っていたようだ。だいぶんスケールが異なっている。