お不動さんの白蛇

原文

むかし、神谷村の後藤某という家の土蔵の中に、いつか白い蛇が住みついていました。

しかし、別に悪いことをするわけではなかったので、長い間そのままにしておいたところ、あるとき、その家の主人が、「おまえは世にもめずらしい白蛇(はくだ)である。おまえがほんとうに神のお使いであるならば、この三宝の上に乗ってみよ」といいました。

するとどうでしょう、その白い蛇は静かに三宝の上にのって、いかにも「私は神のお使いである」とでもいうように、トグロを巻きました。

そこで主人は白蛇を三宝にのせたまま、不動さんの本殿へもっていき静かにおいて帰ってきました。

そのあと、この白蛇は毎年三月二十八日のお祭りの日になると、きまって岩の割れ目に姿をあらわすようになりました。

そのため、お祭りに来る人たちはその光るものをみたさに、二メートルばかりの岩をよじのぼって、岩の割れ目に顔をおしあてて、奥の方をそっとのぞきます。

たしかに割れ目の奥に、わずかな光を反射して、銀色にかがやくものが見えます。

よくよく見るとそれは蛇で、しかも白い蛇です。

土地の人々は、その白蛇をみた人は、近いうちにきっとよい事があるといい、この白蛇が不動さんの使いだと信じています。

 

白と金色の蛇が 加藤正作さん(神谷三丁目)

わしが子どものころ、岩の入口で白い蛇を見たことがある。岩の中には、白い蛇と金色の蛇がいるといわれている。

昔から、蛇をいじめたり殺したりしてはいけないといわれてきた。もしもそんなことをしたら、たたりがあるんだよ。

 

神谷のお不動さん

白蛇で有名な神谷町のお不動さんの本殿は、位牌岳から南へのびた尾根の一番先が、やがて平地となるあたりの、丘の西がわのすそをけずって建ててあります。本殿の東がわは切りたった岩のかべになっていて、そのすそ近くにななめに長さ二メートル、巾五センチ、深さ約一・五メートルほどの割れ目があります。不思議なことに、毎年三月二十八日の不動尊のお祭りの日になると、きまって割れ目の奥に光るものが見えます。普通の日にのぞいてみても何も見えないのに、この日に限ってみえるのも不思議です。

富士市総務部広報広聴課
『ふるさとの昔話』より