昔、三浦某という男が、沢地川の奥の「蜘蛛が渕」で、ただ一人やまめ釣りをしていました。
その時、突然大きな蟒の影が水面に赤く映りました。ほんとにびっくりした男は、釣りもそこそこに、家に逃げ帰って来ました。
しかし、間もなくそれが因で寝込んでしまった男は、とうとう死んでしまったといいます。
村人たちは、その後この沢のことを、「とりつき沢」と呼ぶ様になりました。
* * *
蜘蛛が渕は、二段の滝で構成されています。上の段には、不動尊の石像が祀られ、渕と呼ばれるにふさわしい、すご味と神秘性を具えています。
下の段の水のよどみも、背筋の寒くなる様な、一種の恐ろしさを感じさせます。なお渕の右側には「さねの水」と称して、女陰を思わせる奇形な自然岩があります。
渕の前面には、少しの広場があり、昭和の初め頃までは、そこが村の青年の雨乞いや、相撲等のリクリエーションの場として使われていました。これも、蜘蛛が渕という大自然の背景があってのことでしょう。(沢地・下里三郎氏談)