田尻池の竜

原文

これは、山中落城の話と関係があります。

といいますのは、この竜が実は城主松田康長の魂だといわれているからです。

康長は、前の話の様に隠密にだまされ、火をつけられ、それが元の内乱で殺されたのです。それで、魂が浮かばれず、山中城のそばの田尻池へ、竜となって現われ、所の人人を困らせていたのです。

ある時、一人の旅の僧が、田尻池へ出かけて行って、三日三晩懇ろに弔ってやりました。すると、それっきり姿を現さなくなったそうです。(坂小・ふるさとのむかし)

(註)この旅の僧が、どういう者であったか、全然伝わっていません。ことによると、松田康長や、山中城に関係の深い人であったのかもしれません。

三島市郷土資料館『三島の昔話』
(三島市教育委員会)より