池の平

原文

今のさなぎ山の池の平と言う所に、大きな、形だけで水のない池がある。然し昔は満々と水をたたえ底知れぬ恐ろしさであったと言う。

昔、或る日デシどんと言う人が其処を通ったら池の側に赤い牛がねていた。デシどんは「はて不思議だこんな牛がいるとは?これはきっとただ事ではない、後のたたりはおそろしいけれど殺してしまうに限る」と考え其の牛を殺した。するとその牛は大蛇の化けたのであった。それから池の水が自然と干てしまったという。(新間澄枝)

静岡県女子師範学校郷土研究会『静岡県伝説昔話集』
(谷島屋書店・昭9)より