昔、中部に三人の子がある夫婦がいたが、妻が病気になってしまった。薬を求め与えても、薬では治らないから、鳴瀬の三の淵の水を汲んで来てくれ、という。夫が言われるままに水を汲んできて飲ませると、妻はおいしそうに飲み休んだ。
ところがその夜、妻は大蛇になって天竜川を下り、鳴瀬に来て、夜の明けないうちに帰るのだった。夫は朝になると妻の草履が濡れているので不思議に思い訊ねるが、妻は便所で濡らしたのだ、という。しかし、病気が治ると、妻は川に洗濯に行くといって、そのままたらいに乗り、鳴瀬に下ってしまい、竜になったという。