片目の魚 静岡県静岡市葵区 長光寺前に古く広い池がある。この池には主がいて主は龍であった。ある時、幼児が誤って池に陥て死んだ村の人は怒って石を池に投げた、その石が主にあたって片目潰された。この池の魚は皆片眼となってしまった。(玉川村誌) 小山有言『駿河の伝説』(安川書店・昭和18)より NDL 旧玉川村の話ということで、今の桂山地区に見える長光寺の伝説だと思われる。ここより南になる水見色の高山にかつてあった池のヌシの話がさまざまに語られるのだが(「高山の池」より)、長光寺の話には近い要素が並んでいる。 これが互いに影響があった結果だとして、重要な点はこちらの話でヌシの正体が龍であるとはっきりしているところ。高山の池のヌシは牛鬼のような牛の怪物ということが示される一例以外は、みなヌシの正体を明らかに語っていない。 これが、現在の市民の森公園内に再現された高山池には、ヌシの竜が、と書かれているようであり、あるいはこの長光寺の伝説と(相互に)混合しているのじゃないかとも思う。 もっとも、遠州に行けば、龍神のことを「形牛の如し」と表現することもあるので(「赤谷の淵の龍神」)、同じ感覚がこちらにもあったならすべて同一線上でとらえてもよい、ということになろうが。 ツイート