深戸のどや渕に主争いがあった。西乙原の畑佐某という家のお爺に、水蜘蛛が夢枕に立って「どうか今夜、夜中にうなぎがわしを攻めてくるので応援してくれ、応援してくれればわしは勝つが、応援してくれなければうなぎに負ける、ひとつ応援を頼む」といって消えた。
お爺は水蜘蛛なんて実際に見たこともないし、どや渕に蜘蛛がおるの、うなぎがおるのとも知らないので、何だ夢か、ぐらいにしか考えていなかった。しかし、ものは試しと思いお爺が行って見た時は、水蜘蛛は負けて殺されて浮いておったという。お爺の家は今では身上をなくしてしまった。(上苅安)