悪い滝の主を退治した勇士

原文

瀬戸の滝の主は大蛇でした。水の底の渦の中から出て来る大蛇の姿は、大変恐ろしくこのため人々は決して瀬戸の滝には近づきませんでした。大蛇は毎年八月になると大水を出して阿島の水田を流してしまうのでした。阿島の人々はぜひこの大蛇を退治してしまいたいと思い、毎年勇士が出かけて行ったがどうしたのか一人も帰って来る者はありませんでした。ところがある年のこと旅の武士が通りかかりました。その武士は腕が強そうに見えたので村の人々は大蛇退治を頼んだところ「お任せ願いたい。必ず退治して進ぜよう」と引受けてくれました。翌朝武士は瀬戸の滝へと向い大蛇を退治し戻って来ました。武士は大蛇を退治した様子を村人に話しました。村人は感謝し武士をもてなしました。後になってこの武士は上郷の野底山の姫宮でヒヒ退治で有名な岩見重太郎であることがわかりました。それからは大水も出なくなって阿島の水田は秋になると稲穂が黄金の波を打つようになったということです。

『喬木村誌 下巻』より