むかし浅間山の麓の真楽寺(御代田町塩野)の池に住んでいた大蛇が、近津の森から貞祥寺(佐久市前山)を通って双子池へやって来た。そして地下にもぐって、その穴の口に大きな石を載せて置いた。ある時京都から甲賀三郎が来て、石を動かして見ると大きな穴があった。これが今の風穴で諏訪湖へ抜けているという。(栄村、上区、農、岡部良作80)
真楽寺とは、蓼科山中の穴に入り、蛇体となった甲賀三郎が地上に出てきた場所そのものであり、話の起点と終点がつながってしまっている。蓼科山頂近くには甲賀三郎が入った横穴というのがあるという伝もあるのだが、どうにか双子池を一枚かませようとして円環になってしまったのかもしれない。
もっとも、双子池の雌雄とは、諏訪湖と松原湖の雌雄の竜が巡り合うところの意だという話もあり(「双子池と雌雄の竜」)、それが甲賀三郎と春日姫だというなら、その線上にある話であるのかもしれない。どう整合性がとられていたのかは現状定かではないが。