蜘蛛が淵

原文

北相木村白岩の入口に、蜘蛛が淵という淵がある。むかしはこの上の所に道があった。時々蜘蛛の巣が道一ぱいに張ってあるのを見ることがある。しかし蜘蛛を見た人はなかった。

ある日ひとりの魚釣りがこの淵で釣をしていると、物すごく大きい蜘蛛が出て来て、足へ糸をからんで淵へ引き込もうとした。この人は草履を取られただけで、命からがら逃げ上がった。村の人に話すと、村中のものが集って蜘蛛祭をやって沢山のお経をあげた。それから後は、蜘蛛も巣を張らなくなった。今の経塚はこのとき上げたお経を埋めたのだという。(三寸木、農、新津与吉71)

『限定復刻版 佐久口碑伝説集 南佐久篇』
(佐久教育会)より